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日の丸製造業を蘇らせる!“超高速すり合わせ型”モノづくりのススメ

実力よりも高給なのになぜかワーキングプアの中国
現地で目にした「ゲンバの凋落」は我が身を映す鏡

松本晋一 [株式会社O2/株式会社XrossVate/株式会社安田製作所代表取締役]
【第20回】 2014年11月26日
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2年間で中国人技術者の月収は1.5倍に
給料の値上がりと実力のアンバランス

 上海で射出用金型の会社を経営している知人がいる。彼に尋ねた。

 「35歳、男性。金型設計、機械加工の経験が10~15年。月収は?」

 彼は、しばらく考え込んで「6000元~8500元」と答えた。

 現在の為替レートで計算すると、おおよそ12万~17万円だ。彼の会社は上海の西側、海浦地区にある。中心街から車で1時間~1時間半の工業地帯だ。東京で言えば、埼玉の所沢や川越といったところだろうか。

 2年前の月収を聞いてみた。「4000元~6000元」との答えが返ってきた。この2年間で1.5倍に増えている。

 上海近郊に寧波という都市がある。上海近郊で最も金型企業が集積しているエリアだ。数名~数百名の中小企業が、300社ほどあると言われている。東京で言えば、大田区だろうか。ただし新幹線で2時間の距離なので、新潟あたりだろうか。この寧波の相場は、上海よりも1000元ほど低いらしい。それでも、日本円で10万~15万円だ。

 昨今の急激な円安の影響もあるが、中国と日本の人件費はとうとう1対3、もしくは1対2くらいまでに縮まっている。

 トヨタ系の部品メーカーの技術者と一緒に、中国企業の視察に訪れたときの話だ。その方が、食い入るようにCADの画面を見ていた。

 「どうしました?」と私が声をかけると「むちゃむちゃ速い……」と一言。

 マクロが組まれているようで、ハイスピードでCADの画面が切り替わる。クリックのスピードも尋常ではない。ゲームをしているのではないか、と錯覚するほどだ。

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松本晋一 [株式会社O2/株式会社XrossVate/株式会社安田製作所代表取締役]

株式会社O2(オーツー)株式会社XrossVate(クロスベイト)株式会社安田製作所代表取締役。1970年生まれ。千葉県出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。大手化学メーカー、外資系ITベンダーのディレクター、コンサルティングファームのディレクターなどを経て、2004年株式会社O2を設立、代表取締役就任。2013年に新会社XrossVateを設立。2014年に射出成型用金型メーカ株式会社安田製作所に出資を行い経営参画。

 


日の丸製造業を蘇らせる!“超高速すり合わせ型”モノづくりのススメ

日本の製造業は危機に瀕していると言われて久しい。様々な業界関係者が口にする「日本企業は技術で勝っても事業で負けている」という言い訳は、本当に正しいのか。実は、日本のゲンバにはもっと根深い本質的な課題がありそうだ。日本企業の5重苦、7重苦の原因は、日本の技術力の低下そのものにあり、その原因は大きく「技術伝承」の放置と悪い意味での「部分最適思考」の2つにある。製造業を中心に大手企業のコンサルティング業務を手がけ、企業のゲンバと深い付き合いを続けてきた株式会社O2(オーツ―)の松本晋一代表取締役が、“超高速すり合わせ型”モノづくりの極意を説く。

「日の丸製造業を蘇らせる!“超高速すり合わせ型”モノづくりのススメ」

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