ライフハッカー編集部 - Webアプリ,Webサービス,キーパーソン,起業 07:00 PM
科学にとってスタートアップは希望かもしれない:ピーター・ティール氏
シリコンバレーでは、次々に億万長者が生まれています。しかし、革命的な技術の進化に影響を与えるような仕事をしている人たちは、ほとんどいないのです。
科学者への支援が不十分
PayPal創業者の1人で、著名なエンジェル投資家でもあるピーター・ティール氏は、これを大きな問題であると考えています。カリフォルニアのハーフムーンベイで開かれた「Techonomy Conference」にて、彼の古い友人でありLinkedInの創業者でもあるレイド・ホフマン氏との会話で、資本主義の欠点として基礎科学の奨励が不十分だという点に注目しました。ライフスタイルアプリを作った人たちが大金持ちになっている一方で、科学者たちは非常に貧しい暮らしをすることになる恐れがあるとティール氏は語ります。
「この200年、あるいは250年間の技術革新の歴史について考えると、非常に多くの発明家たちが、自分たちの作ってきたものからほとんど価値を生み出せていない、というのが事実です」と彼は言いました。「もし皆さんがアルバート・アインシュタインであれば、一般相対性理論は思いつくでしょうが、億万長者にはなれません。百万長者になることすらできないかもしれません」
自由主義者であるティール氏は、もし実現する可能性があると思えれば、科学研究への支出の移行によってこの格差を是正するという政府の考えに賛成しただろうと言います。しかし、彼は賛成していません。「われわれのシステムではそれを実行することは政治的に不可能です。なぜならば、左派の人であれ、右派の人であれ、常に教育制度の拡充といった功利主義的な考えを優先するからです」と彼は言いました。
しかし、米国連邦議会の議員たちが科学分野において予算を使わないのは近視眼的だからのみならず、無知だからであると彼は言いました。「ある日私はこのことについて調べてみました。535人いる上院議員と下院議員のうち、おおまかに見積もって、35人しか科学、工学、あるいは科学技術の予備知識がありません。非常に甘めに見積もってもです。それ以外の500人は風が吹いていないときに風車が動かないことや、太陽光パネルが夜に機能しないことすら理解していないのです」
議会における議員の構成比は単なる偶然ではなく、広い範囲での文化的な偏りの兆候だと彼は言いました。「全ての文化、全ての政治があらゆる形式の科学技術を嫌う社会にわれわれは住んでいるのです」と話し、次のように続けました。「私は先日、映画『ゼロ・グラビティ』を見ました。それを見ても、ほとんどの人は宇宙に行きたいとは決して思わないでしょう。どこか南国の島に行った方がいいと思うのではないでしょうか」
起業家にとってのチャンス
科学的な技術革新における問題について政府が取り組もうとしないのであれば、大企業も取り組もうとしないでしょう。ティール氏とホフマン氏は同意見です。スティーブジョブスのような強力な創業者によって経営されていない限り、大企業は取締役会によって何か大胆なことをしようとしても邪魔をされてしまいます。「集団の決定は、いつもリスクの最小化に帰結するものなのです」と、ホフマン氏は言いました。
しかし、朗報があります。政府の無知と大企業の保守主義が意味するのは、起業家にとってはより多くのチャンスがあるということです。
「そもそもなぜスタートアップが存在するのかという謎がわかりました」ティール氏は言いました。「その答えは、大きな既存の機関が政治的にあまりに失敗しているからだと私は思います」
Peter Thiel: Startups Are the Best Hope for Science|Inc.
Jeff Bercovici(訳:Conyac)
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- ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか
- ピーター・ティール,ブレイク・マスターズNHK出版