財政ファイナンスとみなされるリスク「より高い」-日銀議事
11月25日(ブルームバーグ):日本銀行は25日午前、追加緩和に踏み切った10月31日の金融政策決定会合の議事要旨を公表した。反対した委員の間から「経済・物価に対する限界的な押し上げ効果は大きくない」という意見のほか、「実質的な財政ファイナンスであるとみなされるリスクがより高くなる」との指摘が出ていた。
期待への働きかけについても、何人かの委員は「量的・質的金融緩和は導入時には人々の期待を変化させる効果を持ったが、追加的にこれを拡大しても、その効果は導入時と比べてかなり限定的なものにとどまる」と述べた。このうち1人の委員は、効果の持続性についても疑問があると付け加えた。
日本銀行は10月31日の金融政策決定会合で、長期国債の買い入れを「保有残高が年間約80兆円に相当するペース」に拡大、指数連動型上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REIT)の買い入れも従来の3倍に増やすことを決定した。この決定に対して、木内登英、佐藤健裕、森本宜久、石田浩二の4審議委員が反対票を投じた。
追加緩和のコスト・副作用について、複数の委員は「市場機能の一段の低下」を指摘。さらに、複数の委員は一段の金利の低下が金融機関の収益や仲介機能に与える影響について懸念を示した。
「2年」に過度にこだわるべきでない何人かの委員は「年間約80兆円の増加ペースで国債買入れを行うとなれば、フローでみた市中発行額の大半を買い入れることになるため、国債市場の流動性を著しく損なうだけでなく、実質的な財政ファイナンスであるとみなされるリスクがより高くなる」と指摘した。
複数の委員は「帰属家賃を除いた消費者物価の前年比は1%台後半で推移しており、消費税率引き上げ分も考慮すると、物価は相応に上昇しているというのが家計の実感である」と述べた。別の複数の委員は「2%の物価安定の目標は、成長期待の高まりなどを踏まえて中長期的に達成すべきものであり、2年程度の期間に過度にこだわるべきではない」と述べた。
一方、追加緩和に賛成した1人は「日銀はこれまで、何らかのリスク要因によって見通しに変化が生じ、2%の物価安定の目標を実現するために必要であれば、ちゅうちょなく調整を行うとの方針を繰り返し述べており、ここで政策対応を行わなければ、そうしたコミットメントをほごにするものであると理解され、日銀に対する信認が大きく損なわれる可能性もある」と述べた。
4人の委員の反対理由は掲載されずさらに、具体的な追加緩和の内容について、何人かの委員は「今回の措置が人々のマインドに働きかけるものであることを踏まえると、戦力の逐次投入と受け取られないよう、リスク量や副作用も勘案のうえ、可能な限り大きな規模を目指すべきである」と述べた。
追加緩和に対して反対票が出た場合、議事要旨では通常、反対した委員それぞれの反対理由が掲載されるが、10月31日の決定会合の議事要旨には、反対した4人の委員の反対理由は掲載されなかった。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net
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更新日時: 2014/11/25 10:25 JST