死んだふり作戦
東京・霞が関の中で、未明まで照明が消えない不夜城として知られる財務省庁舎。戦中の'43年に建築された地上5階、地下1階の趣ある建物で、最上階には全国の徴税部隊を指揮する国税庁が陣取る。東大法学部卒を中心としたエリートたちが昼夜を問わず働く、まさに日本の中枢だ。
既定路線といわれた消費税の10%への税率引き上げに暗雲が立ちこめはじめた11月初旬。そんな庁舎内はさぞやバタバタとしているかと思いきや、「不気味なほどの静寂」(全国紙経済部記者)に包まれていた。
時の総理をも「格下」とバカにし、自分たちの掌の上ですべてが回っているかのように我がもの顔で振る舞う。そんなプライドの固まりの英才集団が、悲願である消費増税が延期されかねない危機に沈黙しているのにはワケがある。
「死んだふり作戦です」
財務省OBが言う。
「財務次官の香川俊介氏は安倍晋三総理からも菅義偉官房長官からも信用されていない。というのも、この4月に消費税を8%に増税するのをためらっていた官邸を、『増税しても景気は大丈夫だ』と財務省が説得して実現に導いた経緯があるからです。しかし、蓋を開ければ景気はどん底に落ちた。官邸は怒り心頭で、『財務省は増税のために官邸を欺いた』『財務官僚の言うことだけは信じない』と恨みを買ったのです」
いま声高に増税延期反対を叫べば、官邸の気持ちを逆なでしてしまう。安倍総理が増税延期に傾いているのは間違いないが、まだ決定したわけではない。財務省がその「最終判断」を後押しすることだけは避けたいし、できれば増税延期は回避したい。だから死んだふり、というわけだ。
財務省の内情に詳しい経団連関係者も言う。
「10月半ばに香川さんが、ある経済系シンポジウムにパネリストとして出席した。そこで、このままでは『財政が回らなくなる』と日本の財政危機を訴えて、消費増税の必要性をアピールしていた。ただ当時は、今年4月の消費増税による景気悪化が、当初想定よりひどくなっていることがわかってきた時期。そんな折にまた財務次官が堂々と変なキャンペーンをやっていると、官邸は不信感を一層強めた。そうした『前科』があるので、同じ失敗は二度とできない」
言うまでもないが、財務官僚たちは内心では「増税延期に腸が煮えくり返っている」(中堅キャリア)。民主党政権時代、当時の勝栄二郎事務次官が中心となって野田佳彦総理を籠絡して道筋をつけた経緯があるだけに、それを反故にされるのはもってのほか。安倍政権誕生後も、麻生太郎財務相を説得して味方につけ、なんとしてでも消費税10%を実現させようと奔走してきた。
「だから、増税延期なんてとんでもないと怒り狂っている」(古株キャリア)
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