何が問題なのかまったくわかっていない訳のわからない擁護論から批難論まで飛び交っていて、気が重いというかこういう記事はあまり書くつもりもなかったのだが、論点整理くらいはしておいても良かろう、ということで以下まとめてみる。
論点1:「どうして解散するんですか?」のサイトの何が問題だったのか。
この点でまず異論が無いであろうことの一つは「騙り」行為そのもの。小学四年生みたいなあたかも無垢を装うことそのものがそもそも駄目(なお、10代前後の多感な時期というのは、大人がそこにどういう視線を向けようが「無垢」どころか「無邪気な邪気」の時期でもあるし、そこに「無垢」だの「純心」だのを見出すのは大人の勝手な振る舞いである。その装いをしようという段階で既に浅ましいのだ)。「当時だったらどう考えたか」という言い訳をするくらいなら、「自分が小学校四年の時に感じていたことを思い返してみると」という前置きをしてそのまま書けば良いものを、明らかに意図的にそれをやっている。1994年生まれという履歴が正しければ公職選挙法9条1項に照らして「有権者」であり「参政権保持者」である可能性が否めない(なお、満20歳で日本国籍を有し同一都道府県に3か月以上在住していること、という要件のいずれかで弾かれる可能性は否定しない)。票を持つ有権者がやる行為の一つの卑劣な行為の一つは怪文書や虚偽情報、欺瞞情報の類の流布であって、これは党派や政党関係なく、公正な代議制選挙を維持するための要諦であって、決して許されるべきものではない。しかも「選挙の意義を問う」というのは、立派に代議制選挙そのものに対するポリティカルメッセージにしか成り得ないのだから、この点からも問題視して当然である。というか、そういう姑息な印象操作を容認するような社会は歪なのだから是正されなければならない。「行動するだけ偉い」「動機は立派である」等の類の擁護は何等その問題を無効化しない。
さらに、そのサイトを踏み台として、閲覧者にスパム紛いの行為(事実上スパム行為と言って差支えない)をやらせようとした点も問題。サイトの性質上そこを訪れる多数が「有権者」であるとの仮説はそれなりに立てられよう。その場合、そのような有権者はその行為に巻き込まれる(巻き込まれた)ことになる。そこを問題視しないこともまた問題。本件では有権者は徹頭徹尾馬鹿にされているのだ。
論点2:「僕らの一歩が日本を変える。」という団体との関係
2013年12月25日の記事を読む限り、同団体は2012年に任意団体として発足し、本人等の弁を借りれば「NPO法人」であるそうである。仮に本人の弁の通り「個人が勝手にやったこと」であれば、同団体の名でドメイン取得等を行った時点で「団体・組織の私的利用」にしかならず、同団体から費用等が計上されているようであれば(取得されたドメイン情報を見る限りそうとしか思えないのだが)、「団体・組織の財産の私的流用」にしかならないので、横領に等しい行為と言わざるを得ない。逆に同団体・組織が「個人がやったこと」として切り捨てにかかっているのであれば、その時点で「そのような人間に団体・組織の顔」としてそのような人間を前に立てていたことについて、真剣に自省すべきでしかない。いずれにしろ「問題にしかできない」謝罪となっている上、時限的消滅を作為しそれが明るみに出るとソースコードを書き換えるという、稚拙で思慮の浅い、まこと残念な人物と残念な団体が関与していた残念な案件ということにしかならないことに、恐らく当事者・関係者が保身を優先し「気付いていない」と思われる点がさらに残念な事案となった。
「慶應義塾大学 青木大和さん | ハイパー学生のアタマの中」のインタビュー記事の記載を信じるなら、尊敬する人は「死後も語り継がれるカリスマ性を持ったジョン・F・ケネディ」だそうなので、個人的には自己顕示欲か承認欲求が度を越した事案として捉えているわけだが、同時に同記事時点では「シェアハウス」に住んでいたそうなので、周囲の人間は今回の件を一切知らなかったのか、知っていて止めなかったのかは気になる点ではある。同記事に見られる傾向から考えて(また今回のサイト開設の直前にやりとりされたとされるツイート内容から判断して)全く知らなかったとは思えないので、その点については仮定であるという留保の上ではあるものの、同氏を止める人が周囲に不在であったことは氏にとっては不幸と言えよう。この点で同団体に民主党関係者が関与していた節があるものの、今回の件そのものは委細が判然としないので、そこまで踏み込むのは現時点では軽率ではあろう。陰謀論の種は世に尽きることなし、ではあるが。
論点3:安倍首相のアカウントの発信についての問題
この問題に飛びついたのが安倍首相の公式アカウントである。当初は悪名高い「保守速報」を参照するよう誘導した他者のポストのシェア行為である。「保守速報」が差別問題で「訴訟対象となっているから」問題なのではない。そもそも「まとめサイト」という存在が、恣意的に表題を変え、時に部分抜粋引用による印象操作を行っている一連の「存在意義そのものが問題視される運営そのもの」であり、それが差別的であろうがなかろうが、そもそもメディアの名に値しない情報源へと誘導するような記事をシェアする行為そのものが如何なものかという点でリテラシーの問題は挙げられよう。最も、さすがにその批判は耳に入ったのか、FBアカウントでは当該RTは削除されたようで、替わりにこれがポストされている。「批判されにくい子供になりすます最も卑劣な行為だと思います。」これはまぁ頷ける(と同時にそこに「無垢」を投射することの視線の問題は最初に述べた)。しかし「選挙目当ての組織的な印象操作ではないでしょうが、選挙は政策を競い合いたいと思います」この前半部分で明らかに「組織的印象操作」を否定しつつもそうであることを匂わせるコメントについては、確かに「政策で競うべき」という点はそうだとしても、かなり微妙ではある。もともと政治的には左翼的言動への敵視がコメント欄に野放し状態のアカウントでありそれ自体は政治的党派抗争と考えれば必ずしも否定されるべきではないだろうが、それ党派抗争以前に差別コメントが野放しであるアカウントであり、アカウント運営そのものが「近代民主主義国家の一国の首班として如何なものか」という状態である点は「本件とは無関係に」提起され続けるべき問題であろう。「反日左翼」だの「売国民主党」だのというコメントが跋扈しているのを放置しているのは、党派抗争以前の問題である。それこそ印象操作の放置にしかならない。
その上で「一国の首相という権力の頂点が一個人(一団体)の行為に言及するのは如何なものか」という権力の非対称性を以て問うのは解らない話ではない。当然「触れる必要があったのか」という点においては、だ(触れなかったとしても同氏の行動が「問題がなかった」ことにならない点を、同氏を擁護する人間は非対称性の問題にすり替えている)。一方で言及する以上はあくまで「子供になりすます」行為という表面的事実ではなく、その行為そのものが「代議制への冒涜」であるという一点において批判すれば済む話であったろう(代議制の擁護者足らんとするならば、その点については注意喚起も含めて言及してもおかしくはない。少なくとも同氏と団体はここのところメディアへの露出も少なからずだったのだから)。そこには「触れていない」。もともとアカウント運営者の資質そのものが著しく疑わしい状況において、その資質の無さを一層露呈しただけという、まことに残念な話である。わざわざ「シェア」したものを「消して」までポストし直したコメントでアレである。
論点4:「民主くん」アカウントの曖昧さとお粗末さの問題
同アカウントは民主党のマスコットをアイコンとし、党関係者が運営していることは過去にアカウント自身が言及しているのであるが、同時に「公式アカウントではない」という位置付けであり「個人の発信は特段制限しない」というスタンスで運営されている、極めて位置付けが曖昧なアカウントである。そのアカウントが「内容には賛同できたので、そのフィクションに乗った形のコメント付きで紹介しました。」という弁明にもならない弁明を重ねているのは愚にもつかない。同団体に民主党が党として関与していたのか、今回の件で直接関与していたか、といったことは詳らかにならない限りただの陰謀論を出ないのだが、「どうして解散するのか?」という問いが逆説的意味合いとして「解散する必要などないではないか」ということに帰結する(解散理由に思い当たる節も道理も見出せないという点に収斂する)サイトの「内容に賛同」とはどういった点の何処に賛同したというのか。しかも何の留保もなく「天才少年現る!とてもいい。皆さんもぜひ!」と書いておいてである。言い逃れのしようもない、お粗末さである。民主党の今回の選挙向けのスローガンは「今こそ、流れを変えるとき」である。このタイミングを党として「そのように位置づける」ならば、そもそも「内容に賛同」などできるだろうか。いかに公式アカウントではないと言ったところで党の掲げるスローガンと真っ向からぶつかってしまっていることに「気付いていない」という残念極まる対応になっている。選挙そのものが実に意味も価値もないであると仮定した場合、ボイコットするという戦術も選択肢としては存在する(もっともそれをやれば党はあっという間に辛うじて保っている支持を失い分解するだろうが)。
結論:まこと「残念」な事案である
非常に器が小さく未熟でつまらない人間が、まことに残念極まることを仕出かした挙句にその後始末にも御粗末なまでに残念な対応を繰り返し、それに言及した我国の首班(そう、首班だ)のアカウントがこれまた極めて残念な対応を繰り返し、挙句に野党第一党の党関係者が運営しているアカウントがこれまた何重にも御粗末で残念な事案なのである。与野党のそれぞれ第一党を巻き込む形で、どこまでも残念な演劇を見せられているこの状況は(そして踊っている人も踊らされている人も何が問題なのか解らず場当たり対応を繰返している状況は)、極めて残念なことである。社会の残念さの縮図としか譬えようがない。思慮も考慮もない極めて平凡でつまらない確信犯が、与野党の中枢の残念さ加減をこれでもかと炙り出しているだけなのだ。
個人的には、同氏自体はまだ若いのだし、勇み足もあれば失敗もあろうから、それだけ野心があるなら下心など出さずに、粛々と自身がやらかしたことに向き合って再起の道を図る分には、そこに自省がある限り本件を忘れ去ってしまっても構わない程度には思ってはいる。だが、あまりに残念なことが積み重なっている光景を見て本稿を書いた次第である。右翼だろうが左翼だろうが保守だろうが革新だろうが、愚劣卑劣に残念(な対応と擁護)とくれば、それはまこと「残念」としか言い様がない。
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