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 2016年1月にスタートする「マイナンバー」制度。国民一人ひとりに番号を割り振り、税や社会保障などの分野で活用する制度で、国内のあらゆる企業が対応を迫られる。導入までほぼ1年に迫ったが、準備は遅々として進んでいない。

 マイナンバーの罰則は厳しい。取り扱いをおろそかにすると従業員が逮捕されたり、企業が罰金刑に処せられたりする恐れもある。さらに2016年からは、アルバイトを雇う際にもマイナンバーが必須となる。日経ビジネスオンラインで3回にわたり「マイナンバー制度で企業はどう変わる」を連載した、野村総合研究所の梅屋真一郎氏に話を聞いた。

(聞き手は小笠原啓)

梅屋 真一郎(うめや・しんいちろう)氏
野村総合研究所 未来創発センター 制度戦略研究室長
東京大学工学部、同大学院卒業。野村総合研究所入社後は、投信窓販などの各種制度研究・業務設計に携わる。番号制度に関しては、企業実務の観点からの影響度分析などに従事し、関係省庁や関連団体などとの共同検討を実施。新戦略推進専門調査会マイナンバー等分科会構成員

2016年1月から「マイナンバー制度」(行政手続番号法)がスタートします。導入すると何が変わるのか、私も含め、理解していない人が多いのではないでしょうか。

梅屋:それではまずいんですよ。状況は極めて切迫しています。マイナンバーはあらゆる企業の業務に影響する、非常に大きなテーマです。企業にとって、2015年の最重要課題の一つといってもいいでしょう。

 ある調査によると、2014年9月時点でマイナンバー対応に向けて準備している企業は1割程度。ほとんどの企業は、情報収集に取りかかった段階でしょう。このままだと、制度開始に間に合わない可能性があります。これは企業経営にとって非常に重大なリスクだということを、まずは認識して下さい。

 個人の生活にも大きな影響を及ぼします。私は個人的に、2016年の「年賀状」配達で混乱が起きかねないと懸念しています。高校生のアルバイトを雇う際に、マイナンバーを使って本人確認をせざるを得なくなるからです。

漏洩すると企業も罰則対象に

対応しないと、どんなことが起きるのでしょうか。

梅屋:マイナンバーは国民一人ひとりに番号を付与し、税や社会保障の手続き効率化を目指す制度です。2015年10月から各個人にマイナンバーが通知され、2016年1月から番号の利用がスタートします。

 あらゆる企業は、この制度から逃れることはできません。これから1年程度の間に制度対応を進める必要があります。仮に不十分だった場合、税金が払えなかったり社会保険の手続きが行えなかったりといった事態に陥ります。

 課題は情報漏洩対策です。マイナンバー制度では、個人情報保護法よりも厳しい罰則が規定されています。不届きな従業員がマイナンバー情報を外部に漏洩した場合、従業員が捕まるのはもちろん、企業も罰則の対象になり得ます。

 罰金刑以上の罰則対象になった企業は、行政機関の調達ルールに抵触する恐れがあります。企業の存続が問われる可能性すらあるのです。どのようにマイナンバーを収集し管理すべきなのか、社内のルールを早急に決めておく必要があります。(詳細は「マイナンバー制度で企業はどう変わる」


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