(英エコノミスト誌 2014年11月22日号)
安倍晋三首相は権力基盤を固めるために解散総選挙に踏み切った。有権者は首相にもう1度チャンスを与えるべきだ。
11月18日に首相官邸で記者会見し、消費増税の延期と衆院解散の方針を表明する安倍晋三首相〔AFPBB News〕
安倍晋三氏が2012年の暮れに、自分こそが経済を救い、日本を再生させる人間だと訴えたとき、有権者は彼に総選挙での地滑り的勝利を与えた。
それからわずか2年。首相は衆院を解散して12月14日に総選挙を実施すると宣言し、「私たちはこのチャンスを決して手放すわけにはいかない」と言い切った。
驚くまでもなく、多くの日本人は、自分たちは同じ馬を2度買うよう求められていると考えている。
政治的な計算は明白だ。安倍氏の支持率は、今秋まで同氏が謳歌していた重力に抗うような高さから急落した。であれば、国防政策や停止中の原発の稼働再開を巡る来年の戦いの前、さらに言えば自民党内で安倍氏に対する不満の声が高まる前に、今、あと4年間の任期を目指した方がいい、というわけだ。
野党は混乱状態にあり、選挙に向けて十分な数の候補者を擁立することさえままならない。観測筋は、連立与党は30~40議席減らすが、それでも、かなりの過半数を維持すると見ている。安倍氏の側近の中には、自民党が実際に議席を増やし、連立相手の公明党の助けなしで日本を統治できると期待する人もいる。
景気後退に逆戻りした日本経済
だが、これを避けて通る道はない。安倍氏が経済を再生させるという公約を掲げて選挙を戦うのは、経済再生に向けた同氏の最初の試みが概ね失敗したためだ。
安倍氏は幾度となく、長年のデフレに終止符を打ち、経済を再生させていると主張してきた。本誌(英エコノミスト)は、「アベノミクス」――急進的な金融緩和と政府支出の拡大、広範にわたる構造改革を促進する、巧みに打ち出されたキャンペーン――を承認することで、安倍氏を大目に見た向きの一員だ。
よく知られているように、政権の座に就いてすぐ、同氏は「Japan is back(日本は戻ってきた)」と宣言した。11月17日に発表された第3四半期の悲惨な国内総生産(GDP)統計が浮き彫りにしたように、首相は半分正しかった。日本は確かに戻った――だが、景気後退に逆戻りしたのだ。
そして、賃金が物価に追いつかないため、日本の多くの家計が圧迫されているように感じている。