(2014年11月25日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
中国海軍の船が来年、ロシアとの合同軍事演習のため地中海に姿を現す〔AFPBB News〕
何世紀もの間、欧州の海軍は世界中の海をうろうろしていた。探検をしたり、貿易をしたり、帝国を打ち立てたり、戦争をしたりするためだった。
そう考えると、中国の海軍の船が来年の春にロシアとの合同軍事演習のために地中海に姿を現すことは、かなり重要な節目となる。この海軍合同演習の計画は先週、ロシアと中国の軍事協力について話し合う会議の後に北京で発表された。
欧州文明の伝統の中心である海に艦船を浮かべることに、中国が象徴的な意義を覚えることは間違いあるまい。だが、ロシアと中国はそれ以上に、国際情勢について1つの重要な申し立てをしている。どちらの国も、自国の国境付近での西側諸国の軍事行動に異を唱えているのだ。
中ロ両国が訴える自国の「勢力圏」
例えば中国は、本土の沖合を米国海軍の艦船がパトロールしていることに不満を抱いており、ロシアも北大西洋条約機構(NATO)の拡大に抗議している。中ロ両国は地中海で合同演習を行うことにより、NATOが我々の国境付近をパトロールしてよいのであれば我々もNATOの中心をパトロールしてよいのだというメッセージを、意図的に発しているのである。
だが、両国は武力をちらつかせるその裏側で、「勢力圏」という概念に基づいた世界秩序の見直しも要求している。どちらの国も、国境を接する近隣諸国で起こることについては自分が拒否権を有すべきだと考えているのだ。
例えばロシアは、モスクワが何世紀も支配してきた国の1つであるウクライナが西側の同盟に加わることなど受け入れられないと反発している。プーチン政権が「ユーラシア連合」なるものの創立を目指していることも、旧ソビエト連邦のほとんどの地域にロシアの影響力を再度及ぼそうとする計画であるように見える。実際、それができれば、欧州連合(EU)との間で勢力が拮抗する可能性があろう。
中国は最近まで、その経済力を主に頼りにしながら、自らの影響力をアジア全域に拡大してきた。だが、中国政府はここに来て、安全保障問題での強気な態度をこれまでよりも直接示すようになっている。
ベトナムや日本といった近隣諸国との領土問題にますますエネルギーを注いでおり、昨年には東シナ海上空に「防空識別圏」を設定して、ここを通過する外国の航空機は中国当局にその旨を申告するよう求めている。