WWNトップ » プライバシーとパーソナルデータ

プライバシーとパーソナルデータ

プライバシーとパーソナルデータ

事業者が適切に個人情報を利用するなら同意は不要(前編)【インタビュー】崎村 夏彦氏(野村総合研究所上席研究員)

2014.11.25

Webサービスなどの利用に際して規約を詳細に検討した上で「同意」をクリックする人はほとんどいないのが現状だ。また、ビッグデータ分析によって収集した以上の情報が得られたり、センサーなどによって本人が自覚のないままに情報が取られたりする場合もある。このように「同意」そのものの存在意義が、厳しく問われ始めている。そこで、この分野において国際的な標準化に係わり、また国内でも経済産業省による「消費者向けオンラインサービスにおける通知と同意・選択に関するガイドライン」の策定に係わった、野村総合研究所上席研究員の崎村夏彦氏に、現在の「同意」の課題と解決に向けた議論の現状について伺った。

201411251130-1.jpg

形骸化した同意に、現場は危機感を抱いている

──現在の「同意」に関する最大の課題はなんでしょうか。

崎村:いきなり議論が紛糾しそうなところですね(笑)。まずは規約が膨大で、文章としてあまりに分かりにくいことでしょう。これは誰しもが認めるはずです。

──確かに、事業者が免責のために何でもかんでも規約に盛り込み、何十ページもの難解な文書になってしまっていますね。

崎村:アメリカの事業者でも、サービス開発の現場で実ユーザの行動を計測してみると、明らかに規約を読んでいないと思われるスピードで「同意」ボタンをクリックしているのが判ります。「それでは意味がない」と、もっとシンプルで短いものにして、詳細を読みたい人だけが読めるレイヤー構造にした方がいいと考える人もいるようです。しかし、法務担当に反対されてしまう。

──同意の形骸化を指摘する声は以前からありますが、事業者側にもそうした危機意識を持っている人がいるんですね。

崎村:はい、現場は危機意識を持っています。一方、ヨーロッパでは、例えばドイツはすでにレイヤー構造にすることが指導されています。最初に2ページ程度の分量で重要事項を表示し、望んだ利用者だけが詳細な規約を読めるようになっています。

──規約自体がレイヤー構造になっているのですか。

崎村:規約自体は、従来どおりの内容になっていても、利用者へは重要事項に絞って説明するんです。日本でも不動産の契約時には、重要事項は宅建の有資格者が声に出して説明しますよね。それに近い形ではないでしょうか。

利用者の大半である"普通の人"は法律的な文書を読まないし、読めません。そもそも、日常的な日本語ではないですから。それは英語圏でも同様で、日常の言葉として解釈しようとすると意味を間違えてしまう。さらに、関連法規を前提にして書かれていることがあるので、それを理解していないと判らないことも多いです。それを一般人に求めるのは無理でしょう。


プライバシーとパーソナルデータ

1  2  3  4  5

特集:プライバシーとパーソナルデータ
情報通信技術の発展により、生活のあらゆる場面で我々の行動を記録した「パーソナルデータ」をさまざまな事業者が自動的に取得し、蓄積する時代となっています。利用者のプライバシーの確保と、パーソナルデータの特性を生かした「利用者にメリットがある」「公益に資する」有用なアプリケーション・サービスの提供を両立するためのヒントを探ります。(本特集はWirelessWire News編集部と一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の共同企画です)

バックナンバー記事一覧