経済協力開発機構(OECD)は25日、日米欧などの経済見通し(エコノミック・アウトルック)を発表した。2014年の日本の実質国内総生産(GDP)を前年比0.4%増と、前回5月時点(1.2%増)から下方修正した。15年も0.8%増(前回は1.2%増)に引き下げた。
14年の日本経済は4月の消費税増税の影響で個人消費の回復が遅れ、「減速する」と指摘。その一方で「労働市場の改善状況、さらなる金融緩和政策に支えられる」ことから、今回初めて公表した16年見通しは1.0%増と予測した。減少が続いている実質賃金も労働需給の逼迫を背景に次第に持ち直すとの見通しを示した。そのうえで、記者会見したOECDのランダル・ジョーンズ経済局日本・韓国課長は「実質賃金の上昇が今後の日本経済を左右する。基本給を引き上げない限り持続的な賃金上昇は望めず、消費回復につながらない」と強調した。
ジョーンズ氏は消費税率の10%への引き上げを17年4月に延期することに理解を示した。理由として「経済成長率が低迷することは財政再建によくない」ことをあげた。併せて、17年4月の消費再増税にあたっては「(安倍晋三首相の経済政策)アベノミクスの第3の矢を活用して構造改革を進め、経済を成長させることが非常に重要だ」と語った。
食料やエネルギーを含む総合の消費者物価指数(CPI)上昇率は、季節調整済みで14年はプラス2.9%、15年はプラス1.8%、16年はプラス1.6%を想定。実質成長率の低さや原油価格の下落が響いた。10月31日に日銀が実施した追加の金融緩和に対しては「長期金利の上昇を抑え、物価を高めることに役立つ」と評価し、2%の物価安定目標を達成するまで金融緩和を継続することを求めた。
OECD加盟国全体の成長率は14年1.8%増(前回は2.2%増)、15年2.3%増(同2.8%増)に下方修正し、16年見通しは2.6%増とした。米国は14年、15年とも成長率を引き下げた。16年は3.0%増を見込む。緊縮的な財政政策を乗り越え、家計資産の改善が民間支出を刺激するようになれば、「金融状況や輸出市場が需要の加速を下支えする」とし、着実に成長するとの見方を示した。ユーロ圏は一部の国でデフレに陥るなど停滞懸念の強まりから14年、15年とも従来見通しを引き下げた。16年見通しは1.7%増とした。
OECD非加盟国の中国は不動産市況の低迷などで成長が減速。14年、15年とも成長率予測を引き下げ、16年は6.9%増と見通した。
【表】主な国・地域の実質成長率見通し一覧
2014年 15年 16年
日本 0.4 0.8 1.0
(1.2) (1.2) ―
米国 2.2 3.1 3.0
(2.6) (3.5) ―
ユーロ圏 0.8 1.1 1.7
(1.2) (1.7) ―
加盟国全体 1.8 2.3 2.6
(2.2) (2.8) ―
中国 7.3 7.1 6.9
(7.4) (7.3) ―
(注)単位は%。▲はマイナス。カッコ内は5月時点の予測。中国はOECD非加盟国。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
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