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核のごみ・現と幻/「国が前面」の内実(下)課題共有へ決め手欠く

ジオ・ミライ号を見学する市民ら=8日、東京・臨海副都心

<展示「拒否」も>
 11月上旬、東京都内であった科学イベントに、原発の高レベル放射性廃棄物の最終処分事業をPRする移動展示車「ジオ・ミライ号」が参加した。荷台にスクリーンが設置され、3次元映像で事業を解説。クイズ方式のパネルも設置された。
 展示車は処分事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)が導入し、4月から全国を巡回する。小学1年と幼稚園児の娘2人と見学した港区の女性(35)は「展示内容は分かりやすかった。ただ子どものことを考えると、処分地のない廃棄物を出し続ける原発に賛成できない」と話した。
 NUMOは2000年に発足後、処分候補地の選定を全く進められず、政府・与党内で昨年、組織改廃が検討された経緯がある。
 政府が選定の「前面に立つ」方針に転じ、かろうじて存続が許されたのを機に、事業への理解促進活動を大幅に強化。5月の仙台市を皮切りに、市民対話型のシンポジウムを各地で開いている。
 ジオ・ミライは、シンポジウム開催に合わせ、近郊の商業施設の駐車場を借りて展示される。ただ、「原子力関連との理由で断られることも少なくない」(NUMO)といい、理解促進活動の難しさにも直面している。

<押し付け懸念>
 原発の使用済み核燃料を再処理した際に出た高レベル放射性廃棄物は、青森県六ケ所村で、ガラス固化体の形で1920本が一時貯蔵されている。新たな廃棄物を生み出す原発再稼働への賛否にかかわらず、その最終処分は避けられない課題だ。
 「国民のための議論であることを、社会全体に分かってもらうことが必要だ」。10月下旬、処分地選定の在り方をめぐる議論を再開した経済産業省の作業部会で、メンバーの杤山修・原子力安全研究協会処分システム安全研究所長が訴えた。
 杤山氏は、処分有望地選定に向けた具体的な要件や基準を検討する新たな作業部会の取りまとめ役に就いた。難しい任務を前に「廃棄物の押し付け合いになると問題は解決しない」と懸念する。

<具体化は遠く>
 問題を国全体で共有する必要性については認識が広がりつつあるものの、具体的な処分地選定の話になると協力姿勢を示す地域は出ていない。
 全国知事会は8月、政府に対し、知事会と協議しながら早期選定の取り組みを強化するよう提言した。9月の関係閣僚会議は「知事会と連携し、国民の理解を得る」と応じた。今月7日に首相官邸であった知事会議では、高木陽介経済産業副大臣が協力を呼び掛けた。
 「(最終処分地受け入れは)あり得ない」。最終処分の研究施設が立地する北海道の高橋はるみ知事が、記者会見で明言したのはその4日後。今月3日には、NUMOが北海道釧路市でシンポジウムを開いたばかりだった。


2014年11月25日火曜日

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