インド南部の港町ゴアは、16世紀、ポルトガルのアジアにおける貿易拠点として繁栄を極めていました。人口30万、そのヨーロッパ風の街並みの美しさから「東方一の貴婦人」と讃えられていました。
1542年、この町に一人の宣教師が降り立ちます。日本にキリスト教を伝えたイエズス会のフランシスコ・ザビエルです。ゴアは、アジアへのキリスト教布教の拠点でもありました。ザビエルはこの町の病院に住み込み、病人や貧しい人々、囚人たちにイエスの教えを施していきました。特に、ザビエルが力を注いだのは、奴隷など、カースト制度の中で差別を受けている人々に、等しく神の教えを伝えることでした。その後、ザビエルは日本へ伝道の旅に赴き、さらに中国への布教を目指しました。しかし、その途上で熱病にかかり命を落としました。ザビエルの遺骸は、ゴアへと戻りました。世界遺産の一つ、ボム・ジェズ聖堂には、ザビエルの棺が安置され、今もザビエルの顔を拝もうと世界中からキリスト教の信者たちがゴアを訪れていきます。かつての華やかなゴアの街並みは消え、今は世界遺産に登録されている聖堂と修道院が残るだけになってしまいました。しかし、ザビエルが蒔いた信仰の種は、インドや日本に数多くの信者を生み、花開いているのです。