November 25, 2014
アラスカとカナダにまたがるホッキョクグマの個体群で、今世紀に入ってから頭数が40%減少していることが最新の調査で明らかになった。
このほど発表された調査結果によると、巨大な捕食者であるホッキョクグマは、2001年にはカナダとアラスカに面したボーフォート海南部に1500頭が生息していた。しかし、2010年には900頭まで落ち込んだ。
一方、専門家によれば、ホッキョクグマの個体群は分かっているだけでほかに18あり、米国、カナダ、ロシア、グリーンランド、ノルウェー、デンマークに分布しているが、その実態は十分把握されていない。
例えば、シベリア北部などに生息する9つの集団はほとんど調査されていない。場所が遠すぎることと、資金不足が原因だ。
最も調査が進んで・・・
このほど発表された調査結果によると、巨大な捕食者であるホッキョクグマは、2001年にはカナダとアラスカに面したボーフォート海南部に1500頭が生息していた。しかし、2010年には900頭まで落ち込んだ。
一方、専門家によれば、ホッキョクグマの個体群は分かっているだけでほかに18あり、米国、カナダ、ロシア、グリーンランド、ノルウェー、デンマークに分布しているが、その実態は十分把握されていない。
例えば、シベリア北部などに生息する9つの集団はほとんど調査されていない。場所が遠すぎることと、資金不足が原因だ。
最も調査が進んでいる個体群のうち、ボーフォート海南部の集団を含む4集団は個体数が減少しているが、5集団は横ばい、カナダのマクリントック海峡北中部の1集団はむしろ増えているという。
ホッキョクグマの生息数は種全体では減少しており、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは絶滅危惧II類(危急)に分類されている。
◆薄氷を踏みながら
ボーフォート海南部など、ホッキョクグマ生息域の中でも南の地域は北の地域に比べて気温上昇が速く進んでおり、したがって海氷減少の影響を強く受けている。
地球温暖化による海水温の上昇で、北極の海氷は減少の悪循環に陥っている。NASAによると、北極の氷は1970年代後半以降10年で12%ずつ後退しており、2007年からはそのペースがさらに早くなっている。
カナダ、エドモントンのアルバータ大学で気候変動のホッキョクグマへの影響を調査している生物学者イアン・スターリング(Ian Stirling)氏は、「ボーフォート海南部とその地のホッキョクグマが最初に気温上昇の影響を受け、より北部の地域に比べて大幅に減少が進んでいるのは驚くべきことではない」と話す。
野生生物の個体数動態を研究しているアメリカ地質調査所(USGS)の統計学者で、今回の研究を主導したジェフ・ブロマギン(Jeff Bromaghin)氏によれば、この地域でホッキョクグマが減少しているのは、主な餌であるアザラシを捕る足場として海氷を使うためだという。「氷があったとしても、夏の期間が延びているために冬でも十分な厚さまで成長せず、薄く割れやすい氷が多くなっている」とブロマギン氏は懸念する。
「アザラシは海にいるのかもしれないが、ホッキョクグマはそこまでたどり着けないのだ」。
USGSは2007年、生息地減少と餌の捕獲が難しくなることを根拠に、全世界のホッキョクグマの個体数は2050年までに現在の3分の1に減少すると予測した。ブロマギン氏は「ボーフォート海の個体数変化を見ると、現状はこの予測通りに進んでいるようだ。あるいは、むしろペースが上がっている可能性もある」と見る。
「今回の研究結果は、2007年の予測と何一つ矛盾しない」とブロマギン氏は話す。「むしろ、北極の海氷減少量は以前の気候モデルより大きいという観測結果が出ている。氷は予想よりも早いペースで失われているということだ」。
◆氷減少に耐えられるのか
北極の氷が減っていく中、陸上生活に適応しているホッキョクグマもいるようだ。その一手段として、従来の獲物に加えてハクガンの卵やカリブーの肉を食べている。
しかし、ホッキョクグマは高脂肪・高カロリーの食物を必要とする。餌を多様化させるだけでは不十分かもしれないとブロマギン氏は指摘している。
今回の研究結果は、「Ecological Applications」誌オンライン版に11月17日付けで掲載された。
Photograph by Paul Souders / Corbis