安倍政権下で雇用改革論議が進んでいる。
「雇用支援策を雇用維持型から労働移動支援型へシフトさせていく」という方針だそうで「産業構造の転換に合わせた失業なき労働移動への転換を図る」という方向だそうだ。政府の政策として、転職を当たり前に繰り返す労働スタイルが推奨されるようになるのなら、大学在学中の就職活動に失敗して今はふらふらと生きている俺には幾分気が楽になる話だ。だって失業者が世の中に大勢増えるのだから、淋しくないじゃん!
個性豊かな若者たちがが何故、大学の後期の就職シーズンになると一斉に同じ様な見た目になって、あの採用情報サイトの広告みたいなキモい見た目になるのかというと、要は新卒の正社員になりたいわけなのよ。正社員になれば、とりあえずは安定した収入が得ることができて、立派な企業であれば退職金や年金も保証されているからね。
そもそも、大学全入が当たり前になるのも、みんな大卒の正社員になりたいからなのよ。高卒の求人ってろくなのないじゃん。あと、ハローワーク主催の若者や学生向けの就職説明会なんかいくと、「大卒も高卒も可」の企業は少なくない。そこで高卒の志願者と競うことになると、やっぱり大卒の方が有利な気もするじゃん。
逆に言えば、大学3年の後期から死に物狂いで就活に励み、プライベートはおろか学業も犠牲にして何百もの会社を受けて内定を勝ち取るような根性のない人間には、働き口はないわけよ。よほどのエリートとか、技術的に特別秀でた人間ならともかく、俺みたいに文系で中堅レベルの大学でぬるく生きていた人間は、「スキル的にはごくごく平凡でも壮絶な努力をしている人間」に相対的に見劣りするわけですな。
でもこういう状況ってホント良くないと思う。
だって大学の学費って、純粋に、高いじゃん!
しかもそのくせ現代の大学生って何しているかというと、みんな遊んでばっかりなのよ。授業はサボりまくりだったり、たまに出たかと思えば寝てたり私語してたり、そんなんだから教授の言ってる内容がアタマに入ってないわけよ。学期末のレポートや試験では先輩からあれこれ教わってちゃっかりパスするわけ。
こんな思い出がある。ある授業で、教授が「みなさんスライドを板書するのが面倒そうなのでレジメを配ります」といって、全く同じ内容の書かれたレジメを授業のアタマに配布するようになったのよ。
そしたらみんな、出席票を書いてレジメ貰ったら退席するようになったわけ!
受講者数百人の講義が、あれ以来たった数人だけが受けるシュールな授業になっちゃったんだよね。それでも教授はめげることもなく、スライドの内容をあれこれ説明しながら授業を回してたんだけど、その悲壮感たるやハンパなかった。ちょうど夕暮れ時の授業だったもんで、教室内も薄暗く、ひんやりしててね・・・・
とまあ、大学生のかなりの割合は「大卒新卒の人材になる」ために大学にいっている。残りは教職課程で教員になるわけで、本当に何かを勉強したい人間なんて殆どいないわけ。
俺の母校は広告やマスメディアについて学ぶ学部だったんだけど、広告会社に入った人間はまずいなかった。みんな、地銀とか「その辺の大卒の入る職場」に就職しているわけよ。せっかくいいカリキュラムが組まれていて、大勢の現場経験のある個性的な教員がおもろい授業やってるのに、まともに学んでいる方が馬鹿らしくなってくるんだよね。
もし「大卒正社員」の聖域にメスが入ったら、それはそれは大変なことになる。
教育界はそのあり方の根本的な立て直しを強いられることになる。正社員になって、その会社でできるかぎり「可能なら定年まで」働き続けることが多くの若者の目標だったわけじゃん。そういう労働スタイルが企業の間で壊れてしまったら、「将来的な安定のあってそれなりに稼ぎのいい職場」はもはや公務員くらいしかなくなる。公務員採用試験の倍率がバンバン跳ね上がることになる。公務員になるうえで有利な文系学部(たとえば法学部とか?)に人材が一極集中し、中堅やFランの大学はほとんどが定員割れによって淘汰されてしまいかねない。
すると今度は大学職員や教員が路頭に迷うようになるかもしれない。
学歴もあって経歴も立派な大学教授が、ある日突然失職してコンビニのレジ打ちをするようになるかもしれないぞ。ほんの数ヶ月前までゼミ生の就職の面倒を見ていたオッチャンが、ひょっこりそいつのバイト先にやってくる日がくるかもしれないわけだ。
ヤバイからね(笑)
大事なのは、大学がただ無難な学校経営に甘んじないことだと思うよ。昨日と同じやり方を今日やっても通用するのだから、明日やっても10年先も同じやり方でいい、とか考えているのならダメでしょ。
専攻分野に応じた就職ルートの確保が大事でしょ。俺の母校なら広告だから、たとえば、授業を用いて実際の広告企業に働かせにいけばいいいんだよ。
俺が以前、ある団体にお邪魔したとき、そこで働いている事務の女の子に働くようになったきっかけをきいたところ「大学時代に講義の一環で手伝いにやってきたら、活動の内容に感銘を受けてそのまま就業した」というものだった。なるほどなあーって思ったよ。その大学は名の知れた名門校であったけど、仕事のきっかけ作りを大学在学中に用意できるような学校って良いと思うよ。
ただの「大卒正社員」は崩壊してしまうし、少子化の時代だから教職員になるにも需要もないし、公務員は改革で減らしていく方向にあるわけで、そうなると、意欲的な学生にどんどん知識をつけて、現場を経験させて、そのまま就職させちゃうような学校の価値が高まっていくはずなんだけどなあ。
んでもって、そんなの学校が自力でやるには限界もあると思うから、行政はそういうものを後押ししてやったらいいんじゃないかな。
まあそうなった頃には流石に俺も定職に就いてるはず!