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須賀敦子の方へ [著]松山巖

[文]西條博子  [掲載]2014年11月28日

表紙画像 著者:松山巖  出版社:新潮社 価格:¥ 1,944

 外面と内面の2つの時間の流れが交錯する文章を紡いだイタリア文学者、須賀敦子。彼女の生涯を作品と重ね合わせ、フランス留学に発つ前までの軌跡を、よき友人だった作家がたどった。
 須賀の文章は、感傷的で情緒的な「追憶のエッセイ」と銘打たれることが多い。だが、両親の反対を押し切って結婚した夫、ペッピーノの早すぎる死を始め、彼女は生涯において数多くの岐路に立たされ、そのつど新しく生き直そうと自らの途を切り拓いてきた。死者への激しい追悼の思いを感情に溺れずに綴り、周囲に生き生きとした笑顔を見せて孤独に堪えた須賀の芯の強い一面が浮かび上がる。
 学生時代に親交のあった有吉佐和子が人気作家としてイタリアに来て、「ガス、あなたほどの人がなにをやってるのよ」と作家になる前の須賀をけしかけていたのは愉しい。彼女がもっとも影響を受けた日本文学は、父親の薦めで読んだ森鴎外の『澀江抽斎』。知識のある人に嫁ぎたいと自らの意志をはっきりと主張した、抽斎の4人目の妻の生き方が、須賀に重なるとの指摘もある。

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