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クルマを運転しながらスマホをいじるバカ続出のアメリカ 解決法はlessではなくmore

iPhoneに代表されるスマートフォンがアメリカに普及して以来、運転中に着信したメッセージを読んでいて衝突する事故が増えています。

僕のワイフも1年ほど前にそういう不届きなドライバーに近所の交差点で追突されました。

「運転中のスマホはだめですよ~」といくらメディアが警鐘を鳴らしても、一向にドライバーの行動は改まりません。

日本では電車で通勤する人が多いので、皆、通勤電車の中でスマホを見ているわけですが、アメリカで通勤と言えばクルマ通勤が主流です。だから、これを止めさせるのは容易じゃないのです。

こういう事情を背景に、最近、クルマを運転中にスマホをいじるバカに対する対策は、そのようなテクノロジーを使わせないようにする、すなわちless technologyではなく、もっと徹底的にハイテク化すること、すなわちmore technologyなのではないか? という考え方が出てきています。

つまりスマホのテクノロジーをクルマのオンボード・エレクトロニクスと一体化することで、安全を確保するという考え方です。

着信したメッセージを、ボイス・コマンドで「読み上げなさい」と指示するというようなことは、当たり前になるでしょうし、モービルアイ(ティッカーシンボル:MBLY)のように信号の見落としやわき見運転による衝突を回避するテクノロジーは、いま猛然たるスピードで開発されています。

一例として典型的な新車に組み込まれるDRAMの部品コストは、2年前は僅か13ドルでしたが、今では100ドルを超えています。

これに応じて「クルマのクウォリティが高い」という定義が変わりつつあるのです。

これまでは走りそのものの良さに加えて「たてつけが良い」とか「長持ちする」とかが品質の尺度でしたが、いまはスマホとオンボード・エレクトロニクスとの統合に代表される、デジタル・アメニティが差別化の大きなポイントになりはじめているのです。

これはアメリカン・カルチャーの変遷を考えれば、当たり前のことです。昔はアメリカの消費者とクルマとの間にはlove affair とも言えるアツい関係がありました。

しかし最近のアメリカ人はその百年の恋から冷めつつあり、消費者のキモチはスマホへと移っています。

自動車メーカーは、これまで恋人No.1の地位をずっと保持してきたのだけれど、気が付いたら恋人No.2の座にダウングレードされていた……そういう境遇です。

すると自動車メーカーが考えないといけないことは、恋人No.1であるスマホと、カレを奪い合いすることではないと思うのです。

むしろ恋人No.1を引き立てる舞台装置としてのクルマという発想をしなければいけないのです。

いまロスアンゼルスで開かれているオート・ショーでは「コネクテッド・カーズ」というテーマで色々な出展者がアイデアを競っています。コネクテッド・カーズとは、常にインターネットと接続されているクルマという意味です。

この分野は、今後、いろいろな面白いテクノロジーが出やすいと思います。

さて、関連銘柄ですが、本命はモービルアイだと思います。同社は先日決算を発表しており売上高は予想3,030万ドルに対し3,470万ドルでした。決算が良かったにもかかわらず株価が反応しなかった一因はカンファレンス・コールの中で経営陣が「最初の自動運転車のデザイン・ウインを獲得した。但し、これはモノキュラー(=カメラ一台)テクノロジー+数個のレーダー・センサーという組み合わせで、我々の考えているトライ・フォーカル(=カメラ三台)のシステムではなかった」とコメントしたためです。

この点を少し説明するとモノキュラーとは、現在、モービルアイが自動運転補助システム(ADAS)で行っている標準的な手法を指します。図解すると、下のようになります。

1

これに対しトライ・フォーカルは近距離、標準、遠距離をそれぞれ担当する三つのカメラをフロントガラスの中央上部に集中して配置することで、すべての必要なビジュアル情報を収集するアプローチです。

2

これだとカメラが三台必要なだけでなく、それぞれのカメラに接続されるチップセット(EyeQ)も三つ必要になります。つまりモービルアイとしては3倍の売上になるわけです。

ただ今回、このメーカーがトライ・フォーカルではなくモノキュラー+レーダー・センサーという方法を採用したからといってトライ・フォーカルが死んだわけではありません。

まだ業界全体として試行錯誤が続いているにすぎないのです。

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