【ワシントン=吉野直也】オバマ米大統領は24日、ヘーゲル米国防長官の辞任を発表した。イラク情勢やシリア政策を巡る意見の対立が背景にあり、事実上の更迭となる。オバマ政権で国防長官の辞任は3人目で異例の事態だ。今月4日の米中間選挙で大敗した後の閣僚辞任は初めて。体制刷新を狙ったものだが、政権への打撃は必至だ。
オバマ氏は24日の記者会見で、ヘーゲル氏の辞任について「難しい決断だったが、彼が公務を終えるのにふさわしい時期だと考えた」と説明した。一方、ヘーゲル氏は「米国をより安全で、安定した国にする道筋をつけられた」と語った。
ヘーゲル氏の辞任は過激派「イスラム国」との戦いなど米国の外交・安全保障政策にも影響する。ヘーゲル氏は後任が決まるまで職務を続けるが、人事には米上院の承認が必要で政策の停滞を招く恐れもある。後任は女性のフロノイ元国防次官やカーター元国防副長官らの名前が浮上している。
ヘーゲル氏は共和党出身。昨年2月にオバマ政権2期目の目玉閣僚として迎えられた。オバマ氏は昨年、ヘーゲル氏が進言したシリアへの軍事介入を土壇場で見送る一方で、今年に入りライス大統領補佐官(国家安全保障担当)らの求めに応じてシリア領の過激派「イスラム国」への空爆を決断した。
ヘーゲル氏はシリア政策の「整合性がとれない」との趣旨の書簡をライス氏に送り、自らの辞任も覚悟した行動に出た。オバマ氏はライス氏を代えずに、逆にヘーゲル氏の交代を決断した。
エボラ出血熱への対応や「イスラム国」との戦いなど課題が山積するなか、司令塔となる国防長官の辞任は世界の安保体制にも波紋を広げそうだ。
ヘーゲル、オバマ、カーター、ライス