中国

高倉健はなぜ中国にとって特別な存在なのか文化交流を基軸に日中関係の改善を

2014.11.25(火)  柯 隆

中国人はいったい反日なのか親日なのか、正直言ってよく分からない。

 数年前に中国で起きた反日デモで中国人の若者が暴徒化し、日系の工場やスーパーを破壊した。それをテレビなどで見ていると、中国人は反日的と思わざるを得ない。しかし、東京の銀座や秋葉原で買物する中国人たちを見ると、決して反日的とは言えない。否、日本のアニメーションを好んで楽しむ中国の若者を見ていると、中国人は親日的とも思われる。これは高原明生・東京大学教授(中国政治が専門)が指摘する中国社会の多様性に起因するものであろう。

 そして、中国人の心はとてもうつろいやすく、流行に流されやすい。日本で韓流ブームが起きる前に、中国ではすでに韓国ドラマが流行していた。また、中国人は政治リーダーの一挙手一投足にも敏感である。中国人は独特なセンサーをもって政治指導者の真意を探ることができる。反日デモが起きたのも、若者が政府はデモを許してくれると察知したからである。

 中国人は従順のように見えてズル賢い一面もある。これをもたらした要因の1つとして家庭環境を挙げることができる。一般的に核家族で育った子供は孤独に耐えることができ、単純である。一方、大家族で育った子供は人との接触を好み、人付き合いに長ける。現代の日本人は核家族で育ったものが多く、中国人は大家族で育っている。

日本の映画が後押しした中国の「改革・開放」

 40代以上の中国人は、みんなショックを受けたことだろう。あの「杜丘」が悪性リンパ腫により83歳でなくなったのだ。実に信じられないことだ。

 杜丘とは、日本映画「君よ憤怒の河を渡れ」(日本での公開は1976年、中国での題名は「追捕」)で高倉健が演じた検事の名前である。

 実は、中国の「改革・開放」政策は、この1本の日本映画から始まったといっても過言ではない。最高実力者だった鄧小平は35年前に国民に向かって「4つの近代化を実現せよ」と呼びかけた。4つの近代化とは、「農業、工業、科学技術、国防」の近代化である。

 だが、それをきちんと理解できた国民は少なかった。具…
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