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日本ネット界の勢力を一夜で逆転させた人物とは———2ch新管理人 ジム・ワトキンス氏 独占ロングインタビュー(前編)

2014年11月25日07時11分

日本ネット界の勢力を一夜で逆転させた人物とは———2ch新管理人 ジム・ワトキンス氏 独占ロングインタビュー(前編)


今年2014年の2月19日、日本のインターネット史上で最大の「戦闘」が勃発した。交戦者は巨大掲示板2ちゃんねる・創設者の西村博之氏と、その物理的なサーバー管理者のジム・ワトキンス氏だ。両者の「契約」内容に関する主張の相違がきっかけのこの争いで、初戦は開戦と同タイミングで即終了———物理的にサーバーを管理しているジム氏が「2ch.net」の管理者の座にすわった(その影響としてホットリンク社等への2ちゃんねる利用者データ・提供スキャンダルやLINE社の「まとめブログ著作権問題」が持ちあがり余波が続いている)。


だが、突如として日本のインターネットシーンの中心に浮かび上がったジム氏は何者なのか、今までほとんど知られておらず、おそらく多くの人が(そして当然に自分も)知りたい疑問だ。そこで直接に取材をお願いしたところ、東京とフィリピンという遠隔地間で、断続的にメール、2ちゃんねる、ツイッター上の交信を織り交ぜて行えた。ジム・ワトキンス氏はどんな人物で何をどう考えているのか———この「遅すぎたニュース」を今お伝えする(この記事作成にあたっては話題ごとに時系列などを入れ替え構成してある)。

聞き手・構成:江藤貴紀


————確認したいのですが、このインタビューでオフレコにしないといけない部分はありますか?例えばひろゆきさんについてとか。


ジム・ワトキンス氏(以降、ジム):ご質問には全部開けっぴろげにお話させていただきます。ただもちろん(西村博之氏が違法な乗っ取りをされたと言っている2ちゃんねるの権利関係など)最終的には裁判になる得るような話もあるので、そこのところはお答えできませんが、インタビューの中で出てくる話は気にせず書いてもらって大丈夫です。


————他のメディアから今年の2月以降に取材を申し込まれたことはありましたか?


ジム:一度だけあって、共同通信の記者がいきなり僕の自宅にいきなり来ましたね。でも理由は分からないけど、なんでかその記者は僕のことを麻薬、覚醒剤ビジネスの取引者と勘違いしていたようで怖がっているみたいでした。なんでだろう。あの、彼から聞くまでメタアンフェタミンのことは知らなかったし何しろ自分で売ったこともないから、あまり意味がありそうな会話にはならなかったですね。結局あの取材で何か記事になったかどうかは分かんないです。


———まず、現在フィリピンに在住してられるということですが、なんでフィリピンの住まいに落ち着かれたのでしょう?


ジム:まず、僕はアメリカ生まれだから、もしインターネットビジネスを始めなかったら(米国で)ボーイング社の仕事をしてたと思います。僕の祖父と母親はボーイングに勤務していたんです。


実は2000年に、インドに行くことになりました。このときは一緒に仕事を出来る優良なアウトソーシング先の企業を探していたんです。その頃は資金的に、十分な人数のアメリカ人スタッフを雇うだけの余裕がなかったのが理由です。ただインドは僕にとってそこまで特筆するべき国じゃなくて、その計画は途中で止めました。


その2000年の後半に米国のシアトルで出会った女性と、2001年に結婚することになりました。彼女はフィリピン出身で、僕たちはフィリピンで入籍したんです。それで、フィリピンで暮らそうかと考えるようになりました。その頃にも僕自身はいろんなところで生活してたんですけどね。


———ジムさんがアメリカ軍を辞めてから、いくつかのビジネスをこれまでやってきたと聞いたのですが。


ジム:最初にやったのは(アメリカ西海岸側で北部の)ワシントン州が購入していた墓地の敷地を、整備・手入れする会社です。最近になってそのときに私が人生で初めて雇った従業員が亡くなってしまったんだけど。本当にいい人柄で、みんな彼が死んで落ち込んでると思います。


その後もう一度、商売を始めたのは1986年でルイジアナ州にカフェをオープンしました。そのあと1987年にカフェを模様替えして、しばらく「ゴーゴーバー」を経営してました(注:ゴーゴーバーは水着や下着の女性が接客するバーの一種で、お客がお金を払えば気に入った女性を連れ出すことが出来るお店、らしい)。あのビジネスには面白い面もありましたが、今は家族がいる身分なのでもう一度はじめるつもりはないですね。


———子供時代について教えて下さい。


ジム:小学校から12年間は、ワシントン州に住んで学校に通ってましたよ。今とはだいぶん違う時代風潮で、僕は11歳のときからいろいろな種類の仕事をしてきました。ボートを港に接岸してチップをもらうような仕事をやったり、道路で新聞を売り歩くペーパーボーイもしました。毎年、夏は野良仕事をしていろんな種類のベリーを収穫して集めたり、わらを素手で積み上げるようなこともやりました。僕の生まれ故郷だった、ワシントン州のムキルテオという町はもう今ではすっかり郊外になって、子供達がそういう仕事をするような場面は無くなってますね。


高校を出たあとは漁師を目指したんです。それでアラスカ州に飛んでワンシーズンだけ漁師の仕事をしたけれど、あんなにきつい仕事は人生でもうなかったな。もうちょっと楽な仕事を見つけようとして、僕は陸軍に入隊することにしました。


軍役中にも、随分とカレッジや大学のクラスにも出席しました。でもひんぱんに配転があって配属される基地も変わったから、けっきょく卒業の学位は取れませんでした。通算で184単位をとったんだけど、いま思うと大人になってもまだ僕は自分が何をやろうか決めることが出来てなかったのかもしれない。そのあいだに専攻した中では電気工学がいちばん、学卒の資格を取るのに近い仕事でした。


———初めて、コンピューターに触れたのはいつですか?


ジム:1977年でちょうど発売直後だったと思うんだけど、僕のお父さんがクリスマスに TRS—80のマイコンを買ってきてたんだ。正式にコンピューターの教育を受けたのは軍に入ってからで、バロースコンピューターを使ったんだ。今は、ユニシスになってる会社ですね。


———インターネットで「まとめサイト」という海賊版サイトがありますよね。私の知る限りでは、あれは日本独特のものですが、もしそうだとすると何であんなにまとめサイトが日本で幅をきかせているんでしょう?


ジム:あれは本当に僕にとっていやなものです。今も(まとめサイトにコンテンツをパクられている)2ちゃんねるでシステムを変更して、もっと盗まれにくくするように努力してるけれど、それで効果を上げるところと、その防御をすり抜けるのに成功するサイトとあると思います。あれがSEO(検索結果で上位に来るための手法)で、アフィリエイト広告の収入をオリジナルな情報源を食い物にして奪い取っています。


———アプリのLINEは、マルウェアだと思いますか?


ジム:僕はサムスンの携帯を持っていてLINEがインストールされていたんですが、あのアイコンには一度「デリート」しようとしてタッチしたっきりです。でもサムスン製のアンドロイドにはLINEのプログラムが強固にインストールされていたから失敗した。あれをアンインストールするのはたぶん無理ですね。

もちろん他のアンドロイドフォンに買い換えることも出来るけれど、時間がとられるからそこまではしてないです。

LINEを使うユーザーの人は少なくとも、自分たちのデータがサムスン社とLINE社から見られることは意識しておくべきで、あとおそらくは韓国と日本政府からも読み取られると思っています。あれがマルウェアなのかどうかは僕にはわからないけれど、自分では絶対にあのアプリケーションソフトは使おうと考えないですね。


———ありがとうございます。「マルウェア」について私がちゃんと定義をした質問ではなかったのですが、ものすごく参考になります。つまり、LINEのデータについて日本政府(の一部)が内容を分かっていて、韓国政府機関と協力してデータにアクセスできるということでしょうか?そうだとするとLINEのが明らかに不自然な挙動と、過度に広範なアクセス権限の要求にもかかわらず、日本政府がLINEを(政府のアカウントを開設するなど)バックアップしていて、公共放送のNHKでもしきりに宣伝されていることがよく説明できます。それに日本でLINE社のライブドアブログサービスが(著作権法違反)などにおいてまるで治外法権のような特権を与えられている状況も、データに対する政府のアクセスの「ご褒美」と考えれば、合理的に説明できますね。


———Cloudサービスの安全性についてどう考えますか?


ジム:Cloudというのは本質的に、脆弱です。実際のところ単なるバズワード(意味の定まりきっていない流行り言葉)でもあるけれど、Cloudは一体どういうものでしょう?

あれはデータを保存してアクセス可能なように、様々な形態で接続された様々なおOSを備えたサーバー群ということです。その強度はCloudを保管するサービス企業の従業員が持っている強度と同じで、脆弱性はその企業内部でCloudにアクセス権限のある従業員でいちばん脆弱な従業員と同じなのです。政府機関やスパイによる、集約されたデータへ容易なアクセスをするきっかけになる、というのがCloudの帰結です。


———GoogleやFacebookといったネット大企業のプライバシーポリシーについてどう思っていますか?


ジム:もしプライバシーについて気にしていることがあれば、GoogleもFacebookも使わないべきです。でも今では完全に近づかないということはできないから、何とか網の目をくぐろうとするようにするようにしないといけない、というところでしょうか。


〜第二回に続く〜


*このやりとりの全文、生文章はもうすぐアップロードされるリンク先で閲覧可能にします。

なお、注とある部分と文中の()内は筆者、江藤が意味を補ったもので太字部分も筆者によります。


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