清水理史の「イニシャルB」

いまさらFAX、されどFAX NTTコミュニケーションズ「BizFAX ストレージ&リモート」

 NTTコミュニケーションズの「BizFAX ストレージ&リモート」は、クラウド上のFAXサーバーを利用してFAXを送受信できるサービスだ。インターネットに接続できる環境があれば、どこからでもFAXを送受信することができる。実際にサービスを利用してみた。

“不意打ち”

 「外出先でFAXを送りたいんだけど、どうすればいい?」

 つい先日、実家で工場を営む弟から、そんな相談を受けた。地方の現場を回ることが多い彼は、年間で40〜50回ほど、外出先からFAXを送る必要がある。

 取りあえず、出入りのIT業者に相談したところ、複合機の入れ替えを進められたそうで、その見積金額は何と150万円也。

 なるほど、そういう商売はまだ健在なんだ、と半ばあきれつつも、「FAXかぁ……」と代替え案を即答できない自分がそこにいた。

 かなり前に名刺を交換し、その後、あまり行き来がない相手からは、今でもリリースがFAXで送られてくることがまれにあるが、さすがに自分でFAXを送る機会は今やほとんどない。

 かつてはPCにFAXサーバーソフトを入れて……、などと自宅の環境にもこだわったこともあったが、もはや、たまにしか使わなくなったFAXに関する知識は、ほぼゼロ。すっかり不意打ちを食らった格好だ。

 読者の方々にも経験があるかと思われるが、自分の中では、すでに興味の対象外になってしまった技術について尋ねられると、答えに窮することも少なくない。

 ISDN、フィーチャーフォン、PLCなど、今後、同じようなシーンに見舞われたとしたらと想像すると、ちょっと怖くなってしまった。

クラウド型インターネットFAXサービス

 そんな経緯から、実際に試してみたのが、今回、取り上げるNTTコミュニケーションズのクラウド型インターネットFAXサービス「BizFAX ストレージ&リモート(以下、BizFAX)」だ。

NTTコミュニケーションズのクラウド型インターネットFAX「Biz FAX ストレージ&リモート」

 調べてみると、クラウド上のFAXサーバーを利用するサービスは意外に多い。筆者の実家もそうだが、中小の工場など、業界によってはFAXがまだ現役のケースもあるが、徐々に撤廃していくための移行措置としてのニーズがあるのだろう。

 そんな中から、今回検討したのが以下の3つのサービスだ。

表1:主なインターネットFAXサービス(料金は税別)
  NTTコミュニケーションズ KDDI j2 Global
  BizFAX ストレージ&リモート ペーパーレスFAX eFAX
初期費用 0円※1 1000円 0円
月額料金 1000円 950円 1250円※2
送信料金 8円/3分 15円/枚 月150ページまで無料※3
受信料金 0円 0円 月150ページまで無料※3
付与番号 050 050 選択※4
ディスク容量 100MB 100MB -
Web送信 ×
メール送信 ×
一括送信 × 10件まで 50件まで
スマートフォン対応 メール受信 Androidアプリ受信/メール送受信 メール送受信
開通までの期間 1時間程度 5営業日 即時
  • ※1:Webからの申し込み時のみ
  • ※2:年払いの場合。月払いは1500円
  • ※3:151ページ目以降は10円/ページ
  • ※4:全国56都市の市外局番から選択可能

 正直、サービス内容としてはKDDIやj2 Globalのサービスの方が充実しているのだが、今回は自分以外が使うということで、安心感を重視。中でも申し込み後、すぐに利用できるNTTコミュニケーションズのサービスを利用することにした。これなら、最悪、現場に出掛けてから、急遽、現地でFAXを使いたくなっても、その場で開通手続きができる。

 利用方法を確認したところ、PCから送信できれば事足りるうえ、複数のあて先に同時送信することもほとんどないとのことなので、機能的には十分という判断だ。個人的にはj2 Globalのサービスに興味があるが、FAXの利用頻度が高いならKDDIのサービスもおすすめしたいところだ。

すぐに開通、Webから手軽に送信

 それでは、実際の利用方法を見ていこう。まずは、申し込みだが、NTTコミュニケーションズのWebサイトから手軽にできる。

 管理画面にアクセスするためのパスワード、契約者の氏名や住所、メールアドレス、クレジットカード番号などを入力すると、「050」からはじまる電話番号が自動的に割り当てられる(選択できない)。これが受信用のFAX番号だ。

Webからの申し込みですぐに利用できる

 なお、申し込み後、開通までの時間は1時間前後とされているが、今回は即時に利用可能だった。外出先などで「今使いたい」と思っても、すぐに対応できるのはありがたいところだ。

 ただし、契約が完了しても、そのままではFAXを受信することはできない。受信には初期設定が必要で、BizFAXの設定ページにアクセスし、「FAX受信設定」を「受信する」に設定する必要がある。

 同時に、FAXを自動削除するかどうか、削除する場合は日数(標準は60日。未読でも削除される)、受信したメールを転送するメールアドレスを設定できる。

 BizFAXは、基本的にWebサイトからの操作で受信したFAXを閲覧したり、新しいFAXを送信するが、メールアドレスを指定しておくことで、PCやスマートフォンのメールソフトでもFAXを参照できるようになる。

契約後、受信を有効にする。メールアドレスを設定すれば受信したFAXがメールの添付ファイルとして届く

 筆者は、NTTのひかり電話のFAXお知らせサービスを利用しているが、このサービスの場合、FAXが届いたことはメールで通知されるものの、FAX本体はメールに添付されない。一方、BizFAXの場合、メールに受信したFAXを添付することが可能だ。メールで受信を確認してから、わざわざWebページにアクセスして確認しなくて済むのは便利だ。

 また、初期設定ページでは、送付票も設定できる。相手へのメッセージはFAX送信時に個別に入力することになるが、自社の会社名や担当者名などをあらかじめ設定できるので、送付票を使う場合はここで設定しておくといいだろう。

 実際の送受信だが、受信に関しては、初期設定さえ済んでいれば特に何も操作する必要はない。割り当てられた番号あてにFAXが送られれば、自動的に受信される。Webページからファイルを開いて参照することもできるが、メールに添付しておけば、すぐに確認できる。

 Gmailなどに転送しておけば、スマートフォンからでもFAXを参照できるので、外出先での受信に苦労することはないだろう。

Gmailなどを指定しておけばスマートフォンでもFAXを確認可能
受信したメールは100MBまで保存。設定により60日で自動削除することもできる

 一方、送信は、Webページから実行する。設定ページのWebフォームに、あて先のFAX番号を入力後、「PCよりファイルを選択」ボタンをクリックして、送信したいファイルを選択する。

 送信できるファイル形式は、Word(doc/docx)、Excel(xls/xlsx)、PowerPoint(ppt/pptx)、TIFF、JPEG、Text、PDFで、1ファイルあたり10MBまで、3ファイルまで送信できるが、合計で100ページまでの制限がある(100ページを越えるとエラーで1枚も送信できない)。また、パスワードでロックされている文書や、マクロが組み込まれている文書なども送信できないので注意が必要だ。

 なお、BizFAXの設定ページには、スマートフォンのブラウザーからもログインできるが、ファイルを選択しようとすると失敗する。基本的に送信にはPCが必須と考えた方がいいだろう。

FAX番号を指定後、送信したいファイルをアップロードすることでFAXを送信できる
送付票も添付可能
送信の成否はWeb上で確認できる
電話帳であて先も管理できる

外出先からの利用やFAX機の置き換えに

 以上、NTTコミュニケーションズのクラウド型インターネットFAXサービス「BizFAX ストレージ&リモート」を実際に試してみたが、FAXを送る、受信する、といった基本的な使い方ができれば十分なのであれば、わかりやすいうえ、すぐに利用できるので、このサービスを選ぶ価値はあると言えそうだ。

 中小企業や個人事務所などのFAXであれば、これで置き換えてしまっても十分に事足りるだろう。この機会に、FAXの根本的な見直しをするのも悪くない。

 ただし、複数あて先に送信するなど、より高度な使い方をするには、少々、力不足となる。同じNTTコミュニケーションズの「Biz FAXスマートキャスト」や、前掲したKDDI、j2 Globalなどのサービスの利用を検討するといいだろう。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。