米 ヘーゲル国防長官の辞任を発表11月25日 4時12分
アメリカのオバマ大統領は、ヘーゲル国防長官が辞任することを発表し、先の中間選挙でイスラム過激派組織「イスラム国」への対応など安全保障政策に批判が高まったことから、人事の刷新を図ったものとみられます。
オバマ大統領は、ヘーゲル国防長官とともに24日、日本時間の25日未明、ホワイトハウスで声明を発表しました。
この中で、オバマ大統領は「先月、ヘーゲル長官が相談に来て、任務を終えるのに適切な時期だと彼は決断した」と述べ、ヘーゲル長官が辞任することを明らかにしました。
そのうえで、イスラム過激派組織「イスラム国」やエボラ出血熱への対応、それにアジア重視政策などを挙げて、「いつも私に率直に助言してくれた」と述べ、功績をたたえました。
これに対し、ヘーゲル長官は「オバマ大統領のこれまでの友情と支持に感謝する。国防総省の職員と家族のために仕えたことは、人生の最大の栄誉だ」と述べました。
アメリカでは、今月行われた中間選挙で安全保障政策への批判が高まり、与党・民主党が大敗したことから、オバマ大統領としては人事の刷新を図り、批判をかわすねらいがあるものとみられます。
また、ヘーゲル長官は、「イスラム国」への対応を巡ってオバマ大統領らとの間で意見の対立があったとも伝えられていて、アメリカの国防戦略に影響が出るのかどうか注目されます。
中間選挙後、閣僚が辞任するのは初めてで、オバマ大統領が後任を指名し、議会上院で承認されるまでヘーゲル長官は職にとどまるということです。
ヘーゲル国防長官 成果を強調
辞任の表明にあたり、ヘーゲル国防長官は「オバマ大統領のこれまでの友情と支持に感謝する。国防総省の職員と家族のために仕えたことは、人生の最大の栄誉だ」と述べました。
そのうえで、ヘーゲル長官は「アフガニスタンからの撤退の成功に向けて、同盟国やアフガニスタン軍と準備を進めた」と述べ、ことし末のアメリカ軍のアフガニスタンでの戦闘任務の終結に道筋をつけたことなどを具体的な成果として挙げました。
経歴と国防長官としての業績
チャック・ヘーゲル氏は68歳。
ベトナム戦争に陸軍の兵士として参加しました。
その後、野党・共和党の上院議員を2期12年にわたって務め、去年2月、野党議員の出身ながら2期目のオバマ政権で国防長官に就任しました。
就任後は、ことし末のアフガニスタンでのアメリカ軍の戦闘任務の終結に向けた準備に取り組みました。
また、財政再建による国防費の大幅な削減を受けて、陸軍の兵士の数を第2次世界大戦後、最も少なくする一方、特殊部隊やサイバー対策などを強化する新たな国防戦略の策定に取り組んできました。
ことしに入ってからはイスラム過激派組織「イスラム国」への対応にあたり、ことし8月初めにイラクでの空爆を始めたのに続いて9月下旬にはシリアにも空爆を拡大しました。
「イスラム国」への対応を巡っては、地上部隊は派遣しないとするオバマ大統領と小規模な地上部隊をイラク軍に同行させることも選択肢から排除しないとする国防総省との間で、意見の違いがあったという指摘も出ています。
一方、中国に対しては東シナ海や南シナ海での海洋進出の動きに警戒を示すとともに軍どうしの交流を促進し、信頼の醸成に力を入れてきました。
ケリー国務長官「とにかく悲しい」
アメリカのケリー国務長官はヘーゲル国防長官の辞任について、「知らせを聞いて、とにかく悲しいが、彼の決断を尊重している。古くからの偉大な友人であり、上院議員の時もともに仕事をしてきた。国防長官としてアフガニスタンの政権移行を支えるなど多くの実績を残し、安全保障の会議の場でも、われわれは協力し合ってきた」と述べ、ヘーゲル長官のこれまでの功績を称えました。