クラシカル・ホメオパシー

ホメオパシーと救急医療 ー 心筋梗塞を例にして

ホメオパシーを積極的に利用する人なら、日常生活で生じる傷や怪我(切り傷、削り傷、打撲、化膿、出血、火傷など)に対する、レメディーの即効性を良くご存知のことと思います。

しかし大抵の場合は、救急医学におけるホメオパシーの使用について話すと、「救急手当にも効くんですか?」とびっくりされます。近代アロパシー医学と違い、ホメオパシーは診察や治療に高価で高性能な機械を使わないからでしょうか。ホメオパシーの得意分野というと、どちらかと言えば「時間をかけて治さなければならない基礎的な体調」や「生き方の改善を必要とする慢性病、難病」「こころの病」という印象になりがちです。話し合いによるセッションを通じて、必要なレメディーを処方するイメージが定着しているために、セッションが不可能な救急現場でもホメオパシーが有効だとは、想像がつかないのでしょう。実際、日本の医療システムの中では、未だ病院の治療と平行してホメオパシーを使う例が殆どないため、ホメオパシーの臨床的な役割と実績はあまり知られていません。けれども、ドイツや他国の臨床例を見ても、これはホメオパシーの偏ったイメージです。そこで今回は、近代先端医学の正念場の一つである、救急医学におけるホメオパシーの利用について話そうと思います。

ここでは、たくさんの人が怖がる「心筋梗塞」を例にとってお話しします。危険な仕事やハードなスポーツをしなくても、あるいは事故や震災に遭われなくても、ごく普通の生活のなかで、だれもがなり得る心筋梗塞。(心筋梗塞について以前のブログも参照

心臓発作が起こった場合、いちばん大事なのは、すぐに救急車を呼んで、一刻も早く患者の救命処置をしながら救急治療できる病院に搬送することです。集中治療室で手当を受け、状態が安定したら、普通の病棟に移って回復やリハビリに励む、これが通常の治療の経路です。その過程において、ホメオパシーの出番は3回あります。

① 心臓梗塞が起こった瞬間から救急車が来るまでの間
② 集中治療室での救命治療と平行に
③ リハビリテーションやアフターケア

①心臓発作が起こった瞬間から救急車が来るまでの間

心臓発作が起きたら、第一にすぐ救急車を呼ぶことです。それから第二に、救急車が来るまでの間に、患者にレメディーを処方します。レメディーを摂取できれば、患者の状態や調子が割に早く安定し、入院までの時間を、より楽に持ちこたえることが出来ます。また多くの場合、発作直後のレメディー摂取によって、その後に起こりやすい余病や合併症がもたらす困難や危機もかなり減らせます。

救急手当に必要なレメディーはどういうふうに決まりますか。救急手当に必要なレメディーは何ですか。発作が起こったとき、当人はパニック状態に陥っているか、堪え難い痛みで苦しんでいたり、意識を失っていることが多く、患者とゆっくり話すことは多くお場合不可能です。その場で自分の観察によって、患者に必要なレメディーを決めなくてはなりません。そのためにヒントになることはたくさんあります。

年寄りか、若い人か?初めての発作か、二、三度目の発作なのか?体型は?がっちりしているスポーツマンなのか、運動不足のちょっとメタボなのか?どんな時に(スポーツ、睡眠、食事)、何をしながら、何をきっかけに、発作が起こったか?精神状態は?落ち着いているのか?ソワソワしているのか?もうすぐ死ぬと恐れているパニック状態なのか?痛みがあるか?それは何処か?どんな痛みか?汗をかいているか?肌は温かい、冷たい?顔色は青白か、赤いか?脈が速いか、遅いか。呼吸が落ち着いているか、あるいは必死に空気を求めているのか?十分に酸素が巡っていないチアノーセ状態なのか?咽が渇いているか?何をどういうふうに飲みたがるのか?体力と意識はどこまで残っているか?虚脱しているのか?

このように、発作で苦しんでいる患者と話さなくても、発作の具体的な起こり方や本人の様子を診れば、必要なレメディーが決まります。

心筋梗塞の第一の救急手当に適しているレメディーは、主に四つあります(これはホメオパシーを勉強した人なら、だれでも知っています:Acon., Ars., Arn., Carb-v.)。この四つのなかから、患者の調子に合うレメディーを選び、救急車が来るまでの間、割合頻度多く飲ませれば(場合に依っては二つを交互に飲ませる必要もあります)、苦しみが早く和らぎ、取り返しのつかないような組織の障害も少なくなります。このため救急病院の治療もよりスムーズに進みます。救急車の到着が遅い場合も、このようなホメオパシー手当によって命が助かることもあります。

もちろん、突然の心筋梗塞のときに、レメディーを持っていて、なおかつ冷静に対応できる人が偶然その場に居るとは限りません。心筋梗塞になりやすい、危険性の高い人がいる場合は、運を天に任せないで、その家にレメディーの救急キットを置いておくことをお勧めします。基本的な使い方を覚えておけば、万一の場合に非常に助かります。

最近、駅、コンサートホール、高層ビル、スタジアム,飛行機などに、自動体外式除細動器(AED)が設置されているように、あらゆる救急メディカルキットに基本的にホメオパシーの救急用レメディーを入れることが望ましいです。救急隊員も持ち運ぶべきです。もちろんそれは未だ未だ先の話ですが、厚生省や病院のレベルでは無理でも、ホメオパシーによる心筋梗塞(と他のエマージェンシー)の救急手当は、このように個人レベルでも十分行うことができるのです。

② 集中治療室での救命治療と平行に

発作を乗り切っても、その後に命の危ないトラブル(左心不全、心房細動、心室細動、呼吸困難や肺のトラブルなど)が起こりやすい心筋梗塞。患者の調子が安定するまで、集中治療室での治療が必要です。このとき、病院の集中治療を受けながら、ホメオパシーの力も平行に借りることができます。救急手当と違い、そのときのレメディーの処方は、プロフェッショナルのホメオパスに任せる必要があります。主治医本人がホメオパシーを行うか、専門ホメオパスと組むかはともかく、ホメオパシーを取り入れた治療は治療をより効果的に導き、患者のより早い安定や回復に繋がります。ただし現在の日本では、このようなホメオパシーを併用した病院での治療は、法的な理由や責任問題に絡み、ほぼ不可能だということは十分理解しています。いずれにせよ、救急治療が適切であれば、ホメオパシーを利用しなくても何日かの後に普通の病棟に移れるほど安定します。

しかし残念ながら、逆の場合もあります。容態が好転しない、あるいは悪化していくケースです。ホメオパシーの併用という選択肢は、むしろこのときに生まれます。集中治療室で全力を尽くしても、患者の状態が何らかの理由で全く改善しない、前にも後ろにも動かない、あるいは失望的に悪化した場合、身内や委任代理人が求めれば、ホメオパシーの併用が可能になります。いわば病院でのホメオパシーの人道的救済使用になります。もちろんその答えが主治医次第です。

ホメオパシーに対する賛否両論を冷静に考えれば、医者が断る理由はないはずです。「希釈され過ぎたレメディーは、単なる水や砂糖粒であって、絶対に何の効果もあり得ない」という考え方であれば、効能分の無いものを患者に与えることを禁ずる理由がありません。一方で、「よく解らない、効果があるかもしれない」と思う医者であれば、患者のために、ホメオパシーを駄目元で取り入れることも検討し、専門ホメオパスの意見を求めればいいのです。こういう形で近代医学やホメオパシーの間の境界線がもっと滲めば、どれほど患者のためになるでしょう。近代のアロパシー医学に偏り過ぎている、日本の医療システムがホメオパシーに対する接触恐怖症が少し緩むきっかけにもなります。

③ リハビリテーションやアフターケア

患者の調子が落ち着くと、治療は急性段階から慢性段階へ進みます。慢性的に痛んだ心臓をどういうふうに持続可能な元気な状態に戻すか。後遺症や発作の再発を避けるためにも、この三つ目の治療段階は実に大事です。ところが、このとても重要なケアに対して、どうも病院が一番手抜きしているように見えます。ありきたりのマニュアル的なリハビリを施す、すぐにバイパス手術を勧める、あるいは対症療法的に薬を処方する、などに留まっているのです。ということは、リハビリテーションとアフターケアの治療は、主に患者やその身内のイニシアティブに任されている、と言ってもいいでしょう。主導権は患者個人にあるのですから、ホメオパシーを一番取り入れやすい段階なのです。

この段階で積極的にホメオパシー治療をすることで、たくさんのメリットが期待できます。全体の回復に必要な時間が短くなり、本人がより早く普通の生活に戻れます。心筋梗塞による心臓の障害、動脈硬化症の重さ、総合的な健康状態、年齢等にも依りますが、丁寧にホメオパシーを続けると、最初に避け難いと思われたバイパス手術の必要がなくなるケースも多いです。一方で、バイパス手術を受ける場合でも、心体の負担をよりスムーズに乗り超え、より早く回復するためにホメオパシーは有効です。バイパス手術の決断を迫られたときは、一度、専門ホメオパスにセカンド・オピニオンを求めることをお勧めします。治療に対する視野や選択肢が広がるからです。

ホメオパシーは、心臓や循環器という臓器だけを診るのではなく、心臓と深い関係にある「こころ」も診ます。心臓病や動脈硬化症で苦しむ人の全体を治療するということは、本人の総合的な健康改善とも繋がります。発作の再発と後遺症を回避するには、こういう全体的なアプローチが欠かせません。

ちなみに、ホメオパシーは急性的な心筋梗塞の予防、急性手当、アフターケアだけではなく、他の心臓や循環器の慢性的な疾患の場合にも効果的に使えます。動脈硬化,高圧、慢性心不全、心臓肥大、心房細動、狭心症、不整脈、心筋炎、刺激伝統系の障害、心臓弁膜症。このような器質性や機能性疾患の治療と改善にも、ホメオパシーが大いに役に立ちます。