シネマトゥデイ

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マシュー・マコノヒー&アン・ハサウェイ
『インターステラー』
遠くに行けば行くほど、関係は近しくなる
『インターステラー』マシュー・マコノヒー&アン・ハサウェイ 単独インタビュー

取材・文:編集部・市川遥 写真:(C) Kaori Suzuki

『ダークナイト』シリーズ、『インセプション』などで知られるクリストファー・ノーラン監督待望の最新作は、宇宙を舞台にした壮大な父と娘の物語。キャストにはマシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイをはじめとしてオスカー受賞者が名を連ねている。居住可能な新たな惑星を探すため、死にゆく地球に娘を残して旅立つ元エンジニアのクーパーを演じたマシューと、クーパーと共にミッションに参加する生物学者のアメリアにふんしたアンが語った。

■期待をはるかに超えた出来

Q:完成した映画をご覧になっていかがでしたか?

マシュー・マコノヒー(以下、マシュー):期待を超えていたといえるね。僕はこの映画がどうなるのか、具体的なアイデアを持っていなかったんだ。クリス(クリストファー・ノーラン監督)の思い描いているものは僕にはわからない。でも映画は僕の期待を超えていた。僕は大きな期待を抱いていたが、人間性とその奥深さ、そして壮大なアドベンチャーとの間にどんなバランスがあるかは知らなかった。それらがどうあるべきかもわからなかったが、僕が期待した以上にきちんと描かれていたんだ。それを観てうれしかったよ。

アン・ハサウェイ(以下、アン):こういった映画の多くがグリーンスクリーンを使って作られると思うの。だから、初めて映画を観るときに、本当に初めて全てを観ることになる。でもこの映画では、実際にセットがあったわ。つまり、わたしたちが乗る宇宙船は組み立てられた宇宙船だったの。だから、映画に出てくる多くのことをわたしはすでに知っていると思っていた。それでも、完全に圧倒されたわ。わたしの期待をはるかに超えていたから。

Q:TARSというロボットも出てきます。声を担当したビル・アーウィンも現場にいたんですよね?

アン:彼がロボットの動きもやっていたの。スタッフがビルとTARSをつなぐ装置を組み立てて、彼が声も担当したわ。だからTARSがわたしたちと一緒に歩いているショットのほとんどがビルなの。スパイク靴で氷河をわたしたちと歩いて登ったのもビルよ。ロボットの動きでね。彼は本当に素晴らしいわ。ビルとは『レイチェルの結婚』(2008)で共演したの。わたしの父親役だった。この映画で再共演できてすてきな時間を過ごしたわ。

Q:ノーラン監督と現場ではどのように過ごしたのですか?

マシュー:クリスとはたくさん話し合った。僕は常に、計画ではなく、理解と選択肢をもって現場に入る。自分に必要なものは何か、シーンでしたいことは何かをきちんと選んで仕事に入る。時々クリスがやって来て、話し合うこともある。整理し直したり、少し変えたりするんだ。彼とのそういう会話はとても楽しかった。でも僕のファーストテイクでの演技や僕の選んだ演技で彼が満足したら、彼は中断しないし、「こうしてみるべきだ」とは言わない。もしうまくいけば、クリスは満足げに「うまくいっているよ」と言って先に進むんだ。

■共通点は、働き者で家族を大切にするところ!

Q:初めての共演はいかがでしたか?

マシュー:アンは完璧なプロだ。うまいなと思った人のほとんどが、仕事に関しては手品に頼ったりしない。彼らは単純なことをとてもうまくやる。準備万端でやって来る。そして状況の中で自由に演技し、シーンの中でさまざまな変化を演じる。彼女の演技は全てのテイクで変化するんだ。どのテイクでもね。一度これだという演技を成功させても、次のテイクでは異なる演技をする。彼女はバランスが取れすぎていると感じたら、バランスを崩そうとするんだ。俳優は皆、そうできるのが理想だとわかっているが、全員がそうできるわけじゃない。彼女にはそうする勇気がある。彼女との仕事を全面的に楽しんだよ。

アン:マシューがどんな人で何を期待すべきかわからなかった。(マシューがアカデミー賞主演男優賞を受賞した)『ダラス・バイヤーズクラブ』(2013)の前だったから。“マコノサンス=新生マコノヒー”現象が起こる直前だったの。彼の作品を何年も観てきたわ。彼は素晴らしくて、どっしりとした、とっつきやすい、人に好かれる俳優だと思っていた。それから『マジック・マイク』(2012)を観て、「この人、天才だわ!」と思ったの。彼と会う前は、それが彼自身なのか、一つの演技なのかわからなかった。そして彼と会ってみて実感したの。「あれは1回だけの天才的な演技じゃなかった。この人が天才なんだ」って。それにすてきな人だし、存在感があって、何事も当たり前だとは考えない。人生や、仕事や、家族に対して深い情熱を持っている。彼と知り合い共演できたことで、わたしは自分自身が良くなったと感じた。彼の素晴らしさは言葉では言い尽くせないわ。

Q:もしもお二人が実際に宇宙を旅することになったとしたら、いい旅の仲間になれると思いますか?

マシュー:そうだね、僕たちの価値観は似ているんじゃないかと思うよ。

アン:わたしたちは、家族を大切にするし、働き者よね。楽しむことも好きだしね。

マシュー:歌は彼女の方がうまいけどね(笑)。僕らはいい友達になったよ。この映画で一緒に仕事をしたけど、(宣伝活動を通じて)1か月後には、お互いをもっとよく知るようになっていると思うよ(笑)。

アン:マシューは一緒に宇宙に行く仲間として最適の人だと思うわ。彼は物事を深く考える人だから、中身の濃い会話をすることができる。楽しい人だから、たっぷり笑わせてもくれるでしょう。それに、彼はすごく熱心に働く。彼と一緒に宇宙に行けたら最高だと思うわ。

■キャラクターにパーソナルなものを感じた

Q:本作の軸となっているのは父と娘の関係ですが、ご自身が実際に父親であるということが演技に何らかの影響を与えたと思いますか?

マシュー:最近よくその質問をされるから、もし自分に子供がいなかったとして、クーパーを演じることができただろうかと考える機会はたくさんあったよ。たぶんできただろうとは思う。でも、子供がいないときは、ただの想像にすぎなかった。実際に子供ができるとそれは現実になる。この役柄を演じる上で、毎日自分自身を振り返ったわけではないけど、自分にも家族があるというところからくるフィーリング、直感というものはあった。そもそもクリスもそこを見たんじゃないかな。直接聞いたわけじゃないからあくまで推測なんだけど、初めてミーティングをしたとき、僕らが話したのは、家族、父であること、その意味についてだった。彼はそこを重視したんじゃないかと思うし、だからこそ僕自身も脚本を読んだとき、このキャラクターを自分なりにどう作り上げていくか、すぐにピンときたんだ。このキャラクターにとてもパーソナルなものを感じたんだよ。

Q:この映画を通じて、観客に何を伝えたいと思っていますか?

マシュー:人間は、自分たちの期待を超えることを達成できるものだということ。それに、遠くに行けば行くほど、つまり、僕とあなたの距離が遠くなればなるほど、僕とあなたの関係がより重要になるということ。父と娘の関係が、より近しくなっていくということだね。

アン:愛はヒッピーのためだけにあるものじゃないということかしらね。

マシュー:今のは最高のキャッチフレーズだね(笑)。個人的な体験から言うんだけど、遠くに行って、外から自分の国や家族を見てみると、普段よりずっとよく見えてくるものなんだよね。さっきも、遠くに行くと自分をめぐる関係がよりよくわかると言ったけど、つまりそういうことなんだ。

アン:もう一つ言っていいかしら? どんなにひどい状況になっても戦うのをやめてはいけないということも、この映画は語っていると思うわ!

互いの実力を認め合い、初共演を心底楽しんだ様子のマシューとアン。二人の名演が本作のエモーショナルな部分を一層高めていることに疑問の余地はないだろう。演じた者も「期待をはるかに超えていた」と口をそろえる本作が、映画賞レースでどのような成績を残すのか熱い視線が注がれている。

映画『インターステラー』は公開中

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