セブン&アイ・ホールディングスが新たなショッピングモール「グランツリー武蔵小杉」を11月22日にオープンした。場所は、タワーマンションが立ち並ぶ東急東横線・武蔵小杉駅前。この地域に住む30〜40代の女性たちは、子育てにも仕事にも積極的でファッションにも感度が高いと、一部で注目を集めている。そんな彼女たちを主なターゲットに、セブン&アイが総力を結集し2年半の歳月をかけて開業に向けて準備してきた。オープン初日の開店前には約7000人が列を作り、その数はセブン&アイで過去最多。初日の総来場者数は約12万人と、順調な滑り出しとなった。
総合スーパー「イトーヨーカ堂」を軸に、「赤ちゃん本舗」「タワーレコード」「フランフラン」「ロフト」など、セブン&アイ傘下の企業が勢揃いしている。さらに、セレクトショップの「トゥモローランド」や「ビームス」、ファストファッションの「ZARA」、「GAP」なども誘致。合計で160店舗が軒を連ねる。屋上には庭園を造り、中央の吹き抜けには天井から流れ落ちる高さ14メートルの“水の柱”で憩いの空間を演出するなど、同社のモール事業としては数多くの新機軸に挑戦している。
その中でも特に異例なのが、中核店舗であるイトーヨーカ堂だ。同社を象徴する「鳩マーク」のロゴを、グランツリーの外側にも内側にも露出していないのだ。事実、イトーヨーカ堂の戸井和久社長は、「各フロアでイトーヨーカ堂色を出していないのが、グランツリーの特徴だ」と強調する。
実はそこに、セブン&アイがグランツリーに込めた狙いがある。逆説的だが、イトーヨーカ堂色を消しているところに、業績が低迷するイトーヨーカ堂の再生にかける覚悟がにじむ。