photo by Hoffnungsschimmer
あなたは最後にレコードを買ったのはいつのことだろうか?
いや、若いかたはレコードを買ったことすらないであろう。
僕がレコードを最後に買ったのは、おそらく1980年か1981年のことで、それが何だったかも覚えていない。
それから、なんと30年以上経っている。
そのレコードはまだ家にあるし、プレイヤーもあるので、ごく稀に今でも聴くことはある。だけど、最近ではCDすら買わず、iTunes, iTunes matchへの完全移行を試みている(すごく快適だよ!)。
同じ年代の人たちと同じく、レコードを買う、ジャケットを味わう、そっと針を落とす、キズがいかないようにそっとしまう、クリーナーで埃をとる、などのレコードならではの音楽体験を、懐かしく思い出す。
しかし、それは完全なノスタルジーで、実際に、新たにレコードを買おうと思うことはない。
いや、でも、こんなレコードなら買ってみたいなと思うレコードを発見した。
Third Man Records というレーベルの創業者のJack Whiteさんが出した最新のアルバム『Lazaretto』は、レコードをメインのメディアとしていて、レコードだけで6万枚以上を売り、1994年のPearl Jamの 'Vitalogy'以来の売上を記録したそうだ。
このレコードにはいくつかの仕掛けがある。
CDでも買えるのだが、レコードだけで楽しめるアイディアが盛り込まれているのだ。
1.レコードの針は外側にではなく最も内側に落とす。
溝が外側からではなく、内側から切られているのだ。
だから、最初に針を落とすのは、外側でなくもっとも内側となる。
だからどうというわけではないのだけど、レコードで育ったものにすると、とても新鮮だ。
2.最後はエンドレスになる
最後は一番外側の溝になるが、その溝はエンドレスにつながっている。
最後の30秒は永遠に続く。
3.2種類のイントロを聞ける曲がある
一曲は、アコースティックバージョンとエレクトリックバージョンの2種類のイントロがおさめられており、針を落とす場所でどちかかが聞ける。イントロのあとは同じ演奏になる。
4.ボーナストラックがラベルに隠されている
両面のラベルの位置に、CDにはないボーナストラックが1曲づつ収められている。
ラベルの上に針を落として聴くことができるが、片面は75回転、もう片面は45回転で聴くようになっている(普通は33回転)。
5.ホログラムの天使が浮かび上がる!
驚いたことに、レコードを回すと、天使の立体映像が浮かび上がり、それが回るような仕掛けになっている。
上の写真で、ラベルの上下に小さな天使の像があるのが見えるだろうか?
下にこれらの仕掛けを動画で説明したものを貼ったので、それを見ていただければ、天使が回っているところがリアルに見える。(6分30秒ぐらいのところ)
この仕掛はTristan Dukeさんというホログラフィックアーティストがつくったものということだ。
あまりに不思議で飲み込みにくいので、彼のほかの作品の動画を下に貼っておいた。
素晴らしい。
何が素晴らしいといって、「いまさら」「レコード」を買ってもらうために、これほどのアイディアと仕掛けと付加価値をつける発想と行動力である。
いったい、どこからこんなアイディアをひねりだしてきたのか、まったくもって、驚異である。
このレコードの成功は、レコードというメディアの再発見物語であるだけでなく、さまざまなビジネスへのヒントになりそうな気がする。
それにしても、素晴らしい。
*Mediumの下記の記事でこのレコードのことを知りました。その記事も僕の上記の記事も、上に貼った動画からほとんどの情報を得ています