ドイツ首相のアンゲラ・メルケルは現在、EU(欧州連合)域内のデフレ傾向やウクライナ危機、テロ組織「イスラム国」の拡大など、国外に様々な懸念を抱えている。これに対し、彼女にとって国内で最も大きな懸念は、AfD(アー・エフ・デー)という言葉に集約される。反ユーロの旗を掲げるポピュリスト政党「Alternative für Deutschland(ドイツのための選択肢)」の略称である。
初の州議会選挙で2桁の得票率
今年の夏、メルケルが率いる保守政党・キリスト教民主同盟(CDU)は、青天の霹靂のような「AfDショック」に襲われた。この党は去年創設されたばかりであるにもかかわらず、最初の州議会選挙で大躍進を果たしたのだ。
このポピュリスト政党の路線は、やや右寄りの保守。保守中道路線をゆくCDUにとって、強力なライバルとなる。
AfDは、まず今年8月31日にザクセン州議会選挙で9.7%の票を獲得し、CDU、左派政党のリンケ、社会民主党(SPD)に次ぐ第4の政党となった。
さらに9月14日のブランデンブルク州議会選挙では12.2%、テューリンゲン州議会選挙でも10.6%を確保。これらの州でも、第4の政党となった。AfDの得票率は、これらの3つの州で自由民主党(FDP)と緑の党を上回っている。CDUはAfDが初の州議会選挙で2桁の得票率を記録し、一気に3つの州議会で議席を確保したことに、強いショックを受けている。
ブランデンブルク州議会選挙の投票動向を分析してみた。有権者の関心は低く、投票率は2009年に行われた前回の選挙(67%)に比べて19ポイントも下がり、47.9%にとどまった。投票した市民の数が、42万人も減ったことになる。投票率が低い選挙は、伝統的な政党にとってのマイナス効果が大きく、新しい政党、小規模な政党にとって有利に働く。