2‐1‐1
★前書き★
あてんしょん
※吐き気を催す内容があります。女装・変態が苦手な方はBACK推奨
あおば台は、仙京市中心街からやや北に外れた台地にある。
『台』というように、この地域は高台になっており、戦時中はそこから仙京市に広がる田園風景を望めたそうだ。
しかし、戦後の宅地開発による土地整備で、今現在ではアパート・マンションの密集地になっている。ここから仙京市中心街へ通勤する大人も多く、ベッド街と言ったところだろうか。
子供たちはというと、狭い土地に無理やり作られたような学校、『あおば台中学校』で勉学やスポーツに励んでいた。アカギ少年とて例外でない。
アカギは『狭い箱庭』にウンザリして溜め息をつく。大人たちから同じように教わり、同じような人間に子供は成長する。子供の時期に大人の世界を知ってしまったアカギにとっては、『大人製造工場』である学校に何の価値も見い出せなかったのだ。
それにこの『箱庭』から逃れようとしたアカギは、同じような顔をした同級生から『仲間外れ』の制裁を受ける。「死ね」「学校に来るな」くらいは、もう日常茶飯事だった。中学生たちが、アカギの姿を見ると耳を寄せて、こそこそと話をしているのも日常化していた。
常態化したいじめ。いや、俗に同級生からの『弄り』だ。彼ら中学生から見たら、アカギはすでに芸能人であり、どんな暴言や暴力も受け入れるサンドバック同然だった。
異邦人の排除。
日本人らしいコミュティの形成本能が、純粋な中学生から芽生え始めていたのだ。しかし、その雑草抜きを大人である教職者は放置している。
つまり、同級生によるアカギ弄りは黙殺されていた。その大人たちはお互いを監視し合い、何かあったら生徒の保護者が学校へ口出しすると恐れていたのだ。
アカギはもう大人の生き方を知っていた。だから、彼らが無視をするならば、アカギ自身も心と目にフィルターをかけて外界を遮断した。
非暴力、無抵抗、非干渉。
それでも、中学生のかりそめの正義が、異端者を火あぶりにしようとする。だから、アカギは細心の注意をはかる。
例えば、休み時間も誰とも関わらない。机に突っ伏して寝たふりが鉄則だ。だが一方で自衛のために、外界の音だけは消さないようにする。
足音。一人。
アカギはレベル3の警戒をした。机から顔を彼はあげる。
まだ着なれてない紺のブレザー、そして色違いのスカートの女子の制服だ。緑色のポニーテール、幼い顔立ちのミキは笑顔で、彼に話しかけてきた。周りの危険を省みない天然少女に、彼は危機感のレベルを一気にあげた。
「やっほー、アヤシくん。いつも寝てるし、疲れてるの? 家でちゃんと寝てる?」
アカギは表情を崩さず、冷たくあしらった。
「いつも寝てないよ。どうでもいいだろう……ボクと君は他人だし……」
アカギは言葉を放ってから後悔した。こんな他人行儀がミキに通じるはずがない。彼は反射的に立ち上がった。何をしようとゆっくりと考えたわけでもない。
考えがまとまる前にミキの平手打ちが、彼の頬に飛んできたのだ。打たれたのに、彼は痛みを感じなかった。それよりミキが涙を流していて、彼は心苦しかった。
クラスメイトがざわついている。アカギにはこの状況が理解できていなかった。それゆえにミキや野次馬たちにも、この状況が理解できていない可能性がある。
アカギは無言でミキの手を引いて、教室から走り出した。ややあって、彼にも察しがついた。
(昨日の悪夢の続きみたいだな。)
先ほど、ミキは「寝てないの?」とアカギに聞いてきた。本当は彼女が昨日から寝てないのかもしれない。普通の13歳が、昨日の悪夢からすぐに抜け出すのは不可能だろう。
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