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地球という限られた環境で、人間がずっと共生してゆくために大切なものは何…
地球という限られた環境で、人間がずっと共生してゆくために大切なものは何か。
足元の暮らしと世界の結びつきに思いをはせ、長続きできる経済や開発のためにはどう行動すればいいかを考えてみる。
すると、さまざまな立場の人間同士の対話と協働にこそ答えがあることに気づく。
そんな発想で国連教育科学文化機関(ユネスコ)が進めてきた「持続可能な開発のための教育(ESD)」の普及活動が、ことし10年目を迎えた。
節目の世界会議が今月、名古屋であり、「緊急行動」を採択した。世界市民としての意識を来年以降、もっと速いペースで高めなければならない、と。
グローバル化の時宜にかなう取り組みである。子どもたちが地球規模の発想を養う機会は、もっと潤沢にあっていい。
テーマは難しく聞こえるが、具体的な内容は親しみやすい。
たとえば愛知県立豊田東高校の現場は、近くの川だ。カワヒバリガイという特定外来生物を調べている。輸入シジミにまじって国内に入り、大量発生すると水路を妨げる。外国交易の影が身近にあることを学ぶ。
ユネスコが拠点として認定する国内の学校は、この10年間で15校から約800校に増えた。学校現場での試みが広がっていることは評価したい。
ただ、その進め方には改善すべき点が少なくない。
この学習が意義深いのは、単に環境と開発の調和を唱えるだけでなく、そのために国内外の人間同士の協調を重んじていることだ。ユネスコが各国に政府と市民の絶えざる意見交換を求めるのもそのためだ。
だが日本では、官民の協力が十分とはいいがたい。実施計画を決める文部科学省や環境省などの省庁連絡会議と、NPOなど市民との間にはまだ距離感がある。政府が設けた民間有識者らの円卓会議は、この秋まで3年以上も開かれなかった。
来年からのユネスコの指針は、市民参加を訴えている。NPOのほか、環境問題に直面する災害被害の関係者など幅広い声を生かしたい。
10年の成果をまとめた政府文書には、福島第一原発事故について「エネルギーへの国民意識が高まった」と記した半面、負の側面への言及は少なかった。そうした評価は市民意識とずれているとの指摘もあった。
多様な人々が異論をぶつけあい、共通点を見いだすプロセスそのものが、持続性のある社会を築くための原則だ。その協調の理念を大切にしたい。
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