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森秀明「『itte』の経営学」(10月23日)

P&Gと3M、ヒット商品を生み出し続ける秘密 「闇研」のルール化で開発を活性化

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出所:お客様との討議、外部インタビュー/Copyright(C) 2014 itte design group Inc. All rights reserved.
 毎日のように新商品・サービスや新事業が世に送り出されていますが、今回は新たなアイデアを発掘し、新事業を生み出す手法について、人間の行動様式のあり方を考慮しながら考えてみます。


 キーワードは「知の深化」と「知の探索」です。図のように縦軸を「知の深化」、横軸を「知の探索」とします。今持っている知識をさらに磨き上げるのが「知の深化」で、今まで知らなかったことを含めて新しいことを見つけていこうというのが「知の探索」です。横軸の「知の探索」では、知と知を組み合わせる、そこから新しい知を生み出そうという営みが大事になります。

 図の左上のマトリックスは現在の組織能力です。既存の業務を見直して生産性を向上させたり、コストダウンを図ったりして改善や改良を行うことは「知の深化」として語られます。これに対して、「知の探索」とは現在の組織能力から未知のものを見つけ出すことによって、革新や変革につなげていく行動と言えます。

 日本の多くの企業の場合、「知の探索」を得意とする人材は比較的揃っています。自分が担当する業務を熟知して、それに磨きをかけて効率化するというような活動は日々行なわれているといえるでしょう。また、すでに市場に出している製品・サービスを改良するという活動も日常業務の一断面といえます。自分が知っていることの範囲内で、そこを踏み出すことが少ない活動は比較的、人には馴染みやすいのです。

 その一方で、新しい製品や新サービスを生み出せと言われると、思考停止や活動中断に陥ってしまうのではないでしょうか。あるいは、単なる改善活動を変革だと言い張ったり、変革に見せかけたりする無駄な行動を行ってしまいがちです。「知の探索」とは何か、というその意味や手法を、わかっていないことが原因かもしれません。また、「知の探索」という冒険に踏み出す覚悟や勇気が相当いるからなのかもしれません。

「知の探索」を実践する代表的な企業に米P&Gと米3Mがあります。P&Gには「コネクト&ディベロップ」という考え方がありますが、これは「自分たちの内部のリソースが外部のリソースと連結(=コネクト)された上で、新しいアイデアを開発(=ディベロップ)していく」という考え方で、自分たちのノウハウを外に開放し、外部からも知見をもらって新しいアイデアにつなげていくのです。同社はこの「コネクト&ディベロップ」をルールに定め、「新製品開発の50%以上の案件は外部パートナーと協力して開発すること」と明文化されています。つまり、内部リソースだけで新製品開発を行なってはならないという方針なのです。言いかえれば、内部リソースだけで新製品開発を行っていくことの限界に気づいているのです。