「養豚業者は“豚トロ”を絶対に食べない」は本当か? 都市伝説を養豚場関係者に聞いてみた
※イメージ画像:Thinkstockより
■Twitterに駆け巡るウワサ…「養豚業者は決して食べない部位」
Twitterを中心に、次のような情報がネットを駆け巡っている。
「養豚業に詳しい人に聞いた話によると、養豚業者の人は居酒屋のメニューにある『豚トロ』を決して注文しない。なぜなら豚トロというのは、豚の首から肩にあたる部位の肉だからだ。豚を飼育する際に病気を予防する抗生物質を注射するのは、ちょうど豚トロの部位で、抗生物質が残留している恐れがあるからだ。そんな危険な部位の肉を養豚業者は絶対に食べない」
そんな情報が拡散され、時折ネットを騒がせている。
■「豚トロは危険!」のウワサは本当か?
まずこのウワサのネタ元は何処だろうか?
ネットで検索する限り、このウワサのもっと古い出典は2008年3月に書かれた個人Blogである。以後Twitterを中心として、2014年現在まで個人Blogなどに同様の情報が、何の検証もないまま繰り返し、掲載されている。
■「豚トロ」ってどの部位?
「豚トロ」というのは、食肉の小売り販売をする場合に公正競争規約として、しっかり指定された部位のことではない。もともとはじめて「豚トロ」という名称で肉を売ったのは、北海道旭川の焼肉店だといわれており、2000年初頭にBSE問題が発生した時に牛肉を敬遠する客向けとして、売られはじめたらしい。
具体的な部位は、
・豚の頬肉から首肉にかけて取れる霜降り肉
・豚の首後ろから肩にかけて取れる霜降り肉
・豚の首から取れる霜降り肉(「ネック」と言われていた部分)
・肩肉の一部で取れる霜降り肉
など、首辺りの肉である事が多いのだが、微妙に他の部位も含んでいる場合もある。
■希少部位なのに安い? スーパーで買える豚トロの正体は豚の背脂!?
「豚トロ」の部位を特定しようとしても様々な説が飛び交っている。また、問題なのは“豚トロは希少部位である”という話だ。
どうやら豚トロは、希少部位だというが、「一頭の豚から数百グラムしか取れない」という情報も200~500gと、一定しない。しかも肉の希少部位といえば、高価な肉として認識されており、高級焼肉店くらいでしかお目にかかれないものがほとんどだ。だが、豚トロはスーパーマーケットでも手ごろな値段で入手できる。
実はスーパーなどで安価に買える豚トロは、首周りの肉ではなく、単に豚の背脂を加工したモノもあるという。ただこれが食品偽造にならないのは、豚トロがロースやバラといった部位とは違い、名称が正式に法的に定められている部位ではないからだ。脂の多い豚肉を「豚トロ」と名づけた“なんちゃって豚トロ”も流通しているようだ。
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