(2014年11月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
もし中国が年間2%しか成長していなかったら、どんな風に見えるだろうか? 過去30年間の中国の経済成長を考えると、これはバカバカしいほど悲観的な疑問に思えるかもしれない。
確かに、中国は多種多様な問題を抱えている。実際、中国経済はすでに減速している。だが、いったいどんな災難があると、中国の成長率がそれほど激しく落ち込むのか?
米国の経済学者のラント・プリチェット氏とローレンス・サマーズ氏が共同執筆した影響力のある報告書によると、それは間違った質問だ。両氏にとっては、成長に関して「最も確かで顕著な唯一の事実」は約2%の「平均への回帰」だ。
中国でさえ、上がるものは必ず下がる
彼らいわく、近代史上、6%を超す「超急成長」が10年を大きく超えて続いたケースは稀だという。中国は市場原理を抑制することで、1977年以降、このトレンドに逆らい、恐らくは「人類史上」最も長期にわたる急成長を遂げてきた。しかし、プリチェット、サマーズ両氏は、上がるものは、いずれ必ず下がると言う。
両氏はデータを徹底的に調べ、2つの強力な結論を導き出した。1つは、ある10年から次の10年の成長を予測するための統計的基盤はほとんど存在しないということだ。既知から未知を推定する外挿は、無駄な行為だ。あるいは、両氏の言葉を借りるなら、「現在の成長はごくわずかの予測力しか持たない」。
1967年から1980年にかけて、ブラジルは年間平均5.2%のペースで成長した。あの当時、その後22年間の1人当たり所得の伸びがぴったりゼロになると予想した人はほとんどいなかったろう。
2つ目の発見は、超の字がつく急成長のエピソードは、その継続期間のメジアン(中央値)が9年間だということだ。中国は大きな例外だ。中国のそれに近い急成長の過去がある国は台湾と韓国だけで、台湾は32年間、韓国は29年間、高度成長が続いた。
プリチェット、サマーズ両氏によると、こうしたエピソードが終わった後の成長率の落ち込みのメジアンは4.65ポイントだという。もしそうなれば、中国の成長率は4%、インドのそれは1.6%に低下する。ほとんどの人の予想よりはるかに低い数字だ。