夏はビアガーデンで一杯、冬は鍋をつつきながら一杯……と、ビール党の楽しみは一年中とどまることがありません。そして30~40代を過ぎるあたりから気になるのが、高尿酸血症、そして痛風です。2010年「国民生活基礎調査」によると、痛風で通院中の患者はおよそ96万人とされ、さらに痛風予備軍に当たる人も相当な数に上ります。しかし、「プリン体を抑えたビールなら平気だ」「早くダイエットしよう」といった安易な行動は、逆効果となることも。
生活習慣を適切に改善するためのポイントについて、帝京大学医学部付属病院病院長で、「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」の作成にも携わった藤森新氏にお話をうかがいました。
■痛風は、20~30代の若い世代にも増えている
――痛風といえば「中高年男性の病気」というイメージがありますが、実際にはどのくらいの年齢層の人が多いのでしょうか。
藤森 痛風発作を初めて起こす年齢が若年化しつつあるというのが最近の傾向です。1960~70年代の調査では、40~50代で初めて痛風になる人が目立っていました。そこから、「痛風=中高年の病気」といわれるようになったわけです。ところが、1990年代に東京女子医科大学が行った調査では、発病年齢のトップは30代でした(*1)。20~30年間で、10~20歳も若年化しているのです。
最近では同様の調査がないので不明ですが、おそらくさほど大きな変化はないでしょう。ちなみに、若い女性の患者が少ないことも痛風の特徴です。閉経前の女性は、女性ホルモンの影響で尿酸値が上がりにくいからです。
――痛風の患者さんに多いのは、どのようなタイプの人でしょうか。
藤森 最近になって、痛風になりやすい体質が遺伝することがわかってきました。身内に痛風患者がいれば自分も必ず痛風になる、というわけではありませんが、痛風になりやすい素質を持っている可能性は高いと言うことができます。
ただし、遺伝とは関係なく、生活習慣が原因で痛風になる人も多く見られます。それは、太っている人、アルコールを飲む習慣のある人などです。アルコールというのは、特にビールですね。さらに、レバーなどのプリン体を多く含む食品をよく食べる人も、痛風になりやすいタイプです。プリン体はうまみ成分ですから、おいしい物に含まれていることが多いです。
■痛風を引き起こす「プリン体」「尿酸」とは
――痛風患者の誰もが目の敵にするのが「プリン体」です。これはどのような物質なのでしょうか。
藤森 プリン体は細胞の中の核酸などに含まれる成分で、細胞が生まれ変わる新陳代謝の際に使われます。プリン体は身体に悪い物質だと思う人が多いですが、実際は、生物が生きていく上で欠かせないものなのです。プリン体はもともと体内に存在するほか、食物として外からも摂取され、体内での活動を終えていく過程で最終的に産生されるのが、尿酸です。
*1 山中寿ほか 高尿酸血症と痛風/ 2巻, 1号, 23-9頁/ 発行年 1994年
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