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「財務省の陰謀」は言い過ぎでは ひび割れた庁舎で働く「青臭い」超エリートたち

産経新聞 11月24日(月)20時2分配信

 「御社は昨年くらいに一度建て替えたの?」。ある財務省幹部が本紙を訪れた際、エレベーターホールで出迎えた私に耳打ちした。私が「(建て替えたのは)10年以上も前ですね」と告げると、幹部はどこか納得いかない様子で周囲を見渡した。

 ただ、幹部がそう感じたのは無理もない気がする。彼らが勤務する財務省庁舎は昭和18年に完成した。壁のあちこちにはひびが入り、節電のためか館内全体が薄暗い。それに比べれば、たかだか築10年前後のビルなんて、まさに新築同然に見えるのだろう。

 一般的な尺度でいえば、財務官僚は「超」が付く優秀な人材だ。東大首席卒業や国家公務員試験トップといった経歴の持ち主がずらりと並び、語学も堪能。司法試験の合格者も多数いる。そんな、一般企業に就職したなら「引く手あまた」の人材が、ひび割れた壁に囲まれ、一般的な公務員とほぼ変わらない給与で、昼夜を徹して働く仕事を選んでいる。

 なぜだろうか。陳腐な言い方になるが、財務官僚は「青臭い」のだ。取材で話をするたびに、理屈っぽくて、足元よりも先を見すぎる財務官僚の言い分には首をかしげる部分も多いが、彼らの主張する消費税増税にしろ財政健全化にしろの思想の底流には国の先行きを憂い、国政の“台所”を預かるものとしての自負がある気がする。

 だから、よく週刊誌の記事などでみられる、「財務省の陰謀」や「増税の黒幕」などといったバッシング記事には違和感を覚える。

 記事では、財務官僚が出世のために増税をもくろむとか、政治を操っているなどの記述が満載だ。だが、彼らが高給取りを望むなら、最初から高給企業に就職したはず。もちろん政策実現のため、多少の政界工作はあるだろうが、悪意がない以上、「黒幕」はちょっと言い過ぎではないか。

 年末にかけ、財務省は平成27年度予算の編成に向け、各省との折衝に入るほか、与党とも協議しながら、税制改正大綱の策定を進める。この時期、財務官僚は今年も休日返上、夜を徹して業務に当たることになる。

 取材する私たちも一つ屋根の下、眠れぬ日々が続く。彼らの「青臭さ」に敬意を払いつつ、政策を厳しくチェックしていきたい。(佐久間修志)

最終更新:11月24日(月)20時6分

産経新聞

 

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