バグった勇者のつくりかた。 プロローグ
私の名前は高峰瑠璃。
花も恥じらう中学3年生――15歳の乙女だ。
身長154センチ、体重52キロ、右利き、ポニーテイル。
家族構成、父、母、姉、私。
東京生まれ下町育ち。
父さんのやっている古武術道場で悪夢のような幼少時代を過ごした。
で、今では八神新陰流剣術3段。八神新陰流徒手空拳術2段。
100メートル走11秒フラット。
1500メートル走4分20秒。
握力149キロ。
懸垂のベスト回数は52回。
古武術自体もかなりチートで、友達がヤンキーに絡まれている時に100人相手に勝利した事もある。
っていうか、オリンピックとか見てていつも思ってたんだが……ぶっちゃけ、柔道を習ったことは無いが、あのルールなら金メダル取れる自信がある。
うん、自分でも分かってる。
ほとんど人類を辞めている女だということは。
友達曰く、マンガに出てきそうな武道少女とのことだ。
エ〇マスターとか、グラッ〇ラー刃牙とか、そういう系の漫画。
いや、自分でも実際……加藤〇澄位となら良い勝負ができそうな気もする。
え? 花〇薫? あれは無理だ。まともにやったら10秒持たない。一回位は柔を仕掛けて転ばせる事なら出来そうだが。
と、まあ、そんな感じでメスゴリラを地で行く私だが、スタイルは良い。
顔も……まあ、悪くないと思う。ラブレターも毎日貰うしね。
とはいっても、学校の女の後輩からなんだけど……。中学1年の時は男子からも結構人気があったと思うんだけど、私の異常さが知れ渡ってからは誰も近寄ってこない。
どうしてこうなった……。
まあ、それは良い。
本題に入ろう。
異世界トリップについてだ。
その時、私と姉さんは夜の国道を歩いていた。ちなみに、姉さんも私と同じような境遇で、影でボスゴリラと呼ばれている。
いや、基本的には美人なんだが……握力が150キロ超えてたら、やっぱり妖怪だよね。
また話が逸れてしまった。
そんなこんなで、時速80キロの暴走トラックに轢かれて、二人ともご他聞に漏れずに異世界トリップとなった。
でも、今になって思うと不審な事だらけだった。
そもそも、何故に私達がトラックを避ける事が出来なかったのか。
轢かれて、頭から地面に突撃したわけだが……何故に受け身を取ることが出来なかったのか。
ぶっちゃけた話、ちゃんと対処していれば骨折位で済むはずだった。
いや、まあ、それも良い。
ともあれ、私と姉さんは女神と遭遇した。
彼女が言うには、日本で鍛え上げた能力値が初期ボーナスポイントに換算されると言う。ちなみに、普通の人は20~60の間位とのこと。
で、具体的に数字で言うと、私が3462、姉さんが3580とのことだった。
しかも、初期ボーナススキルとして体術・剣術レベル10(マックス)が標準装備されていた。
そして、なんだか良く分からない属性もついていた。
属性:世紀末覇者
説明:拳王クラスの圧倒的オーラで、低レベルモンスターなら睨み一つで殺せます。
いや、意味が分からない……ごめん、嘘ついた。
本当はなんとなく分からないでもない。
要するに、私たち姉妹は、某3兄弟クラスの圧倒的な何かを持っているという事なのだろう。
世紀末的な何かっていうか、無想転生的な何かっていうか……はっきり言っちゃうと、北斗的な何かと言うか……まあ、そういう系の何か。
あの時は脱力したなあ……せめて……救世主の方にしてほしかったと。
覇者の方だと、本当に見た目からしてゴリラじゃん。
まあ良い、話を戻そう。
それで、魔法とかスキルとか言われても良く分からないので、ボーナスポイントは素早さと体力と力に全振りした。
レベル1時点でのステータスは――
HP 14320
攻撃力 8540
防御力 6434
素早さ 4939
姉さんも似たような感じ。
普通の人は、それぞれのステータスは10~50位が相場とのことで、やっぱり私達姉妹は転生してもゴリラシスターズだった。
いや、何度でも言うけれど、見た目は本当に悪くない……多分。
そうして私はノラヌーク国王と謁見することになる。
私たちのステータスを告げた時の、奴らの対応は物凄かった。
王様も、腰ぎんちゃくっぽい魔術師も、兵士の皆さんも――スタンディングオベーションだった。
拍手と歓声は鳴りやまず、終いには胴上げをされる始末。
そのまま、国王は、国立の大広場に国民を集めて、『伝説の勇者が遂に現れた』とか演説をやり始めた。
乙女姉妹的には正直恥ずかしかったけれど、まあ……それでも悪い気はしなかった。
そんな感じで私たちの魔王退治の冒険が始まった訳だが……とにかく酷い事になった。
属性:世紀末覇者が物凄かったのだ。
モンスターが現れても、奴らは逃げていく。
そりゃあ、もう、物凄い勢いで逃げていく。
ラビット系のモンスターとか、私たちを見るだけで震えて動けないでやんの。
つぶらな瞳を潤ませて、小刻みに震えてやがんの。
蛇に睨まれた蛙。ラ〇ウに睨まれたモヒカン。
――私たちに遭遇したウサギちゃん。
私と姉さんは泣いた。
と、まあ、それで半年後には魔界に辿り着いたのさ。
最初の雑魚モンスターはみんな逃げていったけど、魔界の中ボスクラスはマジでやばかった。
もう、なんていうか、はっきり言っちゃうと強敵みたいな感じ。
レベルが上がってなくて、初期ステータスのままだったら、間違いなく死んでたね。
いや、死んでも蘇生するらしいから、良いっちゃ良いんだろうケド……。
で、私と姉さんは魔界を突き進んだ。
ウロボロス(巨大な蛇)をヘッドロックからのバックドロップで制した。
魔神ロキは出合い頭に大外刈り――そこから流れるように馬乗りになって、怒涛のマウントパンチでタコ殴りにした。
冥界神ハーデス、奴は本当に強かった。
私がバックを取って、姉さんが正面から。
挟み撃ちによる打撃の無限連打という――卑怯技を使わなければ下手すれば負けていたかもしれない。
そして、魔王:ナターシャ=エリゴール。
奴の顔だけは……絶対に忘れる事が出来ないだろう。
何しろ、私たち姉妹に黒星をつけたのだから。
ぶっちゃけたところ、序盤は私たちが押していたように……思う。
中距離と遠距離では、奴の魔法に手も足も出なかったけど、手足の届く範囲に入ればそこは私たち姉妹の絶対領域。
数百、数千と打撃を入れて、関節を取って、骨も折った。
けれど、奴に一切のダメージは通らなかった。
精神生命体とか言う、訳の分からないチート能力のせいで……物理は無効なんだってさ。
実際には、魔神ロキや冥界神ハーデスなんかも、その力を持ってたらしいんだけど、物理のゴリ押しで無理矢理何とかできたらしい。
いや、やけに……固いなとは思ったけれど。
まあ、それは良い。
ともかく、魔王には一切のダメージは通らなかった。
後から聞いた話なんだけど、アストラル体(精神体)に直接ダメージを与えるような武器を使えば、あるいは魔王にでもダメージが通っていたかもしれないという事。
その時に思ったね。
――武器を装備してれば良かった!
よくよく考えずとも、私たちの習った古武術は普通に武器術もあったんだけど、何ていうか日本という社会に育ったせいか、銃刀法的に武器はやっぱり不味いだろ……そういう意識がどっかしらにあったんだと思う。
で……魔王城からの逃走には成功したんだけど、代償はきっちりと支払わされた。
私の右腕と、姉さんの左足。
勇者は蘇生と身体回復が可能なんだけど、魔王にやられた場合はその限りに無かったみたいで……。
ということで、とりあえず、出発の街であるノラヌーク王国に帰還した。
魔王へのリベンジに燃えていた私たちだったけど、外道の王様はそうはさせてくれなかった。
うん。
――そうはさせてくれなかったんだ。
傷物になった私たちは、外道のお気に入りから外されたらしい。
だって、私たちは真名を奪われているから、奴には逆らう事は出来ないからね。
で、驚いたことに――元々、奴の目的は魔王退治じゃなかったんだ。
私たち、異世界トリップ組がやらされている事。
それは素材の調理法を見極める為の、魔王城への突撃の旅路。
その道程は、奴に常に観察されていて、適正を測定されているだけに過ぎなかったんだ。
それから色々あって……私の右腕には猿の腕が移植され、姉さんの左足には馬の脚が移植された。
私たちが運ばれた場所は、ヤバイ系の施設だった。
禁術指定の魔術と技術のオンパレード。
人権無視、人体実験、虐待、ロボトミー手術、なんでも有りの……本気で笑えない施設だった。
そこに集められた勇者は総数80名。
全員がどこかしら体を弄られていて……体を弄られた影響で、私たちに匹敵する力を持ったやつも何人かいた。
『あの日に始まったゲームのプレイヤー』を除いた主催者サイドの人間……そこには、私たちを遥かに凌駕する、ステータスバグとしか思えない奴も……いた。
そう。
あの日にゲームは始まったのだ。
あの日、私たちは施設の大部屋に集められた。
そしてゲームの開始が宣告された。
ルールは簡単。
勝者は一名。期間は1か月。範囲は5キロ四方の研究所施設内。
――そんな感じで、私たちは勇者同士での殺し合いを強要されることになった。
ってことで、ハーレム要員編&ストーリー進行を同時にやります。
今回は趣向を変えて俺TUEEEEを勇気君に真面目にやってもらおうと思っているので、前フリ編が割とハードです。
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