「東洋経済」が発表した「住みよさランキング」No.1の街で、白い一戸建てに住むのも夢じゃない... 続きを読む
PR 2014/8/1
原発ルポ漫画「いちえふ~福島第一原子力発電所労働記~」の作者である竜田一人氏が2014年11月18日、自身が登場する朝日新聞の取材記事中で反映されなかった主張をツイッターで明らかにした。
竜田氏は、低線量被曝によって鼻血が出る可能性は専門家の一致した見解として否定されているとの文章を入れるよう希望したが、朝日新聞の上層部の見解とズレがあったことなどから叶わなかったという。
「いちえふ」は、福島第1原発で約半年間作業員として働いた経験をもとに描いたルポ漫画だ。福島の「真実」を書くのではなく、実際に見聞きし体験した「現実」を記録することを重視しているという。朝日新聞の長期連載「プロメテウスの罠」は、作者の竜田氏に迫る「漫画いちえふ」シリーズを11月5日からスタート。作品が生まれるまでの舞台裏や、編集者とのやりとり、竜田氏の心の葛藤などを伝えている。
連載は順調と思われたが、竜田氏は18日、ツイッターで朝日側と意見の食い違いがあったことを告白した。
18日に掲載された第13回の記事では、作業員の「鼻血」にまつわるエピソードをどのように書くべきか、編集者と竜田氏が頭を悩ます様子が描かれている。文中では2人が「低線量被爆で鼻血が出ることはないと考えている」ことは示されているものの、専門家の見解などは紹介されていない。
これについて竜田氏は、
「再三にわたり『低線量被曝による鼻血の可能性は、専門家の一致した見解として否定されている』という意味の文言を、本文中に入れていただけるようお願いしておりました。この連載には、今こそ、それを明言する責任があると考えたからです」
とツイートした。担当記者もこれに尽力してくれたという。
しかし結果的には、「文章構成の都合上」および「朝日新聞上層部の見解として『鼻血の可能性を否定できないとする意見もある』」との理由で反映されなかったそうだ。
なお、上層部が挙げた「反対意見」を唱える専門家は、東神戸診療所(神戸市中央区)の郷地秀夫所長や岡山大学の津田敏秀教授などが名を連ねていたようだ。こうした人選に竜田氏は「あり得ない」「低線量被曝による鼻血を肯定しているまともな『専門家』がいたら紹介して下さいよ!」などと反論している。
朝日新聞上層部からの指示は本当にあったのだろうか。J-CASTニュースは19日、朝日新聞に質問状を送ったが、19時現在回答は得られていない。
竜田氏は「私の力及ばず、風評や不安に苦しんだ皆様には申し訳なく思っております」と謝罪。その上で自身の要求は取材を受ける側としての「分を超えたもの」だとして、苦労をかけた担当記者に感謝の意を示した。それでも朝日新聞には
「この上まだ、著しくバランスの偏った両論併記で風評払拭の機会を逃す朝日新聞には失望を禁じえませんでした」
との厳しい言葉を寄せている。
一連のツイートは反響を呼び、「ニセ科学」に警鐘を鳴らしてきた大阪大学サイバーメディアセンター教授の菊池誠氏もツイッターで
「被曝で鼻血が出るわけがない。朝日の上層部は『専門家のあいだでの定説』と『思いつきの泡沫説』に同等の価値を与えてしまうのかと思うと、げんなりするね。医療科学部にちゃんと聞けばいいじゃないか」
と朝日新聞の姿勢を問題視した。
漫画における「鼻血描写」で思い出されるのが、人気漫画「美味しんぼ」を巡る騒動だ。福島第1原発を訪れた主人公らが原因不明の鼻血を出すという描写が物議を醸した。医師が「福島の放射線と関連付ける医学的知見はない」と説明する記述もあったが、本人役で登場する前双葉町長が「福島では同じ症状の人が大勢いますよ。言わないだけです」と口にするシーンも描かれた。作者の雁屋哲氏は風評被害を助長するという批判に対し、ブログで「真実には目をつぶり、誰かさんたちに都合の良い嘘を書けというのだろうか」「私は真実しか書けない」と反論していた。
竜田氏は「美味しんぼ」について「業界の大先輩の作品でもあり、これまで沈黙を守って参りました」とツイートし具体的な言及は避けたが、18日掲載の「プロメテウスの罠」では竜田氏が同作の鼻血表現に失望したことが記されている。
なお、19日の「プロメテウスの罠」のタイトルは「仮設に響く昭和歌謡」であり、鼻血については触れられていない。
(11月20日10時30分追記)朝日新聞広報部は20日、「上層部の見解というのは事実ではありません」と否定した。竜田氏の求める文を掲載しなかった理由については「取材、出稿の詳しい経緯についてはお答えいたしかねます」とコメントした。
関連記事
|