凍える寒さの中、動けなくなった近所の仲間を救うため必死でがれきを撤去した。最大震度6弱を記録した22日夜の長野県北部の地震。多くの家屋が倒壊し一部で住民が取り残されたが、近所の住民らの協力で全員が救助され、死者はなく最悪の事態は回避された。「みんなのおかげ」。助け出された女性は被災にショックを受けながらも感謝の思いを口にした。
震度5強だった白馬村の神城地区に住む津滝君和さん(73)は1階の和室で就寝中、家が揺れる大きな音で目を覚ました。「バキバキッ」。突如天井が抜け、2階の床が落下してきた。上半身が挟まれ、抜け出せない。「重くて重くてどうしたってどけられなかった」
「大丈夫?」。気遣う娘の声が聞こえたが、苦しくて返事もままならない。真っ暗闇の中、「もう駄目だ」との考えが頭をよぎった。
外では騒ぎを聞きつけた近所の人たちが集まり、車庫にあったジャッキを使って天井を撤去する救出作業に取りかかった。近くの柏原幸男さん(84)は作業の間、「君和、頑張れ。出してやるから元気出せ」と大きな声で励まし続けた。
津滝さんは数十分して助け出された。「助けが来るまで何年も待ったような気がした」。右肩を痛めたものの、幸い手術が必要なほどの大きなけがはなかった。
「家は駄目になったけど、みんなに助けられたおかげで家族は全員無事だった。それだけでも良かったと思いたい」と津滝さん。柏原さんは「この近所は仲がいい。いつも助け合ってきた」と振り返った。
同じ地区の中学3年の柏原大輝さん(15)は地震発生時、自宅2階の部屋にいた。揺れで倒れた家具の隙間を縫って外にはい出ると、向かいの家が全壊していた。
大きな声で「大丈夫ですか」と呼びかけた。がれきの中から「助けて」と女性の声がする。倒壊家屋の近くに女児(3)がぼうぜんとした様子で立ち尽くしていた。すぐに抱きかかえて自宅に戻り、「面倒を見ていて」と母親に預けた。現場に戻って間もなく、消防隊員らが女児の親族を助け出したという。〔共同〕