| 1954年大分県日田市生まれ。福岡大学体育学部中退。75年崔本産業設立。90年から温泉宿経営。民団久大支部支団長。 |
こだわりの温泉宿 かやうさぎ 崔正義社長 「温泉県」として知られる九州・大分県。日田温泉や黒川温泉、天ケ瀬温泉の5カ所にこだわりの温泉宿を経営する。 リピーター多く 「いずれも川沿いにあり、古民家風の建物と自然を生かした庭園が特徴。富裕層を対象にし、リピーターが多い」。客室は各ホテルとも20〜30室に抑え、目の届くサービスを心掛けている。平均宿泊費は3万円。昨年度売上額は約13億円、従業員は120人。 サッカーのプロ選手をめざしたがあきらめ、大学を中退、広島で就職した。1年後、父が営んでいた崔本土建に入社する。結婚を契機に独立し、75年に崔本産業を設立。造園・運送・ボーリング事業を主体に運営した。79年に崔本土建を引き継ぎ、公共事業の下請けとして土木全般に業務を広げた。 90年、熊本県との県境に近い黒川温泉の黒川荘を熊本観光ホテルから買収し、温泉付き別荘地として売却する計画だった。ところが、「敷地内の景観があまりにもすばらしく、区画整理するには惜しい」と思い直した。 「筑後川源流に沿って屏風岩や竹藪などがあり、温泉地に適した条件がそろっていたので、ホテルとして運営することにした」 土木事業を行うかたわら、自己流で学んだ山林の景観や造園に関する知識が役立った。建物を建て替えたり、増築したりした。 「温泉地には、箱形の建物よりむしろ、自然に調和した、素朴な伝統の建築文化が喜ばれる。自分自身がこういう仕事に憧れていたのかもしれない」。大きな石を運んでは庭園や露天風呂づくりを自前でできるのが最大の強みだ。 大正ロマンを感じさせるラウンジを抜けると、懐かしい茅葺屋根が並ぶ。石畳の通路を抜けて部屋に入ると、静まりかえった土間、囲炉裏の間が続く。離れの「温りの宿」には、和室と囲炉裏を備えた一戸建てが4棟。それぞれに専用の露天風呂、室内風呂を備え、ゆったりとした雰囲気が味わえる。 「初めてのホテル事業だったが、立地条件に恵まれたこともあり、順調に進んだ。どこかで古民家が解体されると聞けば、すぐに現場に駆けつけた」。柱や梁、千本格子、建具などさまざまなものを購入し、新たな温泉宿に活用した。 自然に溶け込む 「囲炉裏の煙でじっくり燻(いぶ)された木材は、時を経るごとに味のある色に変化する。独特の雰囲気を醸し出しながら、自然に調和するのが魅力だ」 次いで天ケ瀬温泉に「山荘天水」、日田温泉に「かやうさぎ」と掛け流し温泉「ゆめ山水」「うめ乃ゆ」を建てた。 「古民家風の建物と自然を生かした庭園、上質の温泉、おもてなしの心をこめたサービス。癒しを求める人は多い。満足した顧客はまた訪れてくれる」。いずれ、「有名な湯布院にもオープンしたい」と、計画推進中だ。 いまひとつ、夢がある。現在、サッカーグラウンド1面を所有し、小学生を指導しているが、「土地を提供してくれるところがあり、グラウンド5面をつくりたい。温泉付き合宿所として、いずれは韓国から高校・大学生を誘致し、地域の活性化につなげたい」。 ◆かやうさぎ=大分県日田市琴平町1529―1(TEL0973・26・0022) (2013.11.20 民団新聞) |