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【政治】

<安倍政治 2年を問う(中)> 安全保障・憲法

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 衆院解散直前の週末、東京都内の公園で市民イベントが開かれた。「今だからLove&Peace」。音楽やアートを通じ、平和について考える催しだ。

 企画した中野区の松井奈穂さん(60)が最も問いたかったのは「憲法」や「集団的自衛権」。しかし、チラシに書くことはできなかった。「憲法の大切さを訴えると政治的な催しとみなされ、公共の施設を使わせてもらえなくなる。いつからこんなに物を言いづらい世の中になったのか」。息苦しさにため息をつく。

 父母から、学徒出陣や疎開の戦争体験を聞いて育った。他国を武力で守る集団的自衛権行使容認に対しては「子や孫を戦場に送ることになる」と、首相官邸前での抗議行動に参加した。「おかしいことには、ノーと言い続けなくては」

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 「私は、私の愛する国を『積極的平和主義』の国にしようと決意している」

 二〇一三年九月、安倍晋三首相は外遊先のニューヨークでの講演で、こう宣言した。

 この二カ月前の参院選を経て、与党は衆参両院で過半数を獲得しており、首相は一連の安全保障政策に着手。米国の組織をモデルとした国家安全保障会議(日本版NSC)創設関連法や、国民の知る権利を侵す恐れがある特定秘密保護法を成立させた。集団的自衛権行使容認も、改憲手続きを踏まずに解釈変更で閣議決定。松井さんが感じる息苦しさは、こうした政策の積み重ねと無関係ではない。

 積極的平和主義について、首相は「米国などと手を携え、世界の平和と安定にこれまで以上に貢献していく」ことと説明。軍事的な「貢献」の拡大を意味しており、日本が戦後、憲法に基づいて貫いてきた平和主義とは異質なものだ。

 日本は戦後六十九年間、海外の戦闘で一発の銃弾も撃たず、他国民を含めて一人の死者も出してこなかった。自衛隊の海外派遣は近年拡大してきたが、イラク戦争でも人道復興支援の名目だった。

 積極的平和主義の象徴ともいえる集団的自衛権は、日本が直接攻撃されていなくても、他国を守るために武力を使える権利。閣議決定では、他国軍への支援の要件も緩和しており、今後これらの具体的な法整備が進められようとしている。

 柳沢協二元内閣官房副長官補は「(集団的自衛権行使は)他国の戦争、内戦への不介入という日本の原則を放棄するもので、『平和国家日本』のブランドを毀損(きそん)する」と懸念。「平和」の意味が変わろうとしている。 (安藤恭子、金杉貴雄)

 

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