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 激しい揺れから1日。長野県北部を中心に、地震の被害の全容が見えてきた。約30棟が全壊した白馬村では、住民も加わった救出活動で男児の命が救われた。我が家を失った住民らに、冬の寒さがのしかかる。

 「柱や板が少しずれていたら、つぶされていた」

 建物の被害が最も大きかった、長野県白馬村神城(かみしろ)の堀之内地区。がれきのすき間から、2歳の男の子を助け出した北アルプス広域北部消防署の小山竜平さん(27)が23日、その瞬間を語った。

 小山さんがこの救助現場に着いたのは、地震から約1時間後の22日午後11時ごろ。真っ暗闇の中、住宅の屋根が地面に横たわっていた。押しつぶされた1階、散らばるがれき、柱、壁……。「とにかく助けないと。まだ時間はある」。家屋が倒壊した現場に臨むのは、初めてだった。

 同僚の消防署員らとがれきをかきだし、それを近所の人たち数人がリレーで運び出す。先に救出された家人の女性が、「あのあたりに子どもがいる」と言った。いったん作業をやめた。訪れる静寂。「大丈夫か」。小山さんは男児の名前を呼んだ。

 すぐに泣き声が耳に届いた。「生きている!」。がれきの2、3メートル奥か。がむしゃらにがれきを取り除くと、敷布団のそばでうつぶせになっている男児の右足が見えた。腰のあたりに覆いかぶさる柱を、近所の人が持ってきてくれたジャッキで持ち上げてすき間をつくり、引っ張り出した。