2014-11-24
「課題解決力、コミュ力」教育で、課題を解決できるようになるのでしょうか?
中学でも、高校、大学でも最近の学校は
「創造性を持った課題解決能力の教育をします」
「プレゼン力、コミュニケーション能力を育成します」
とアピールするところが目に付きます。それに、「グローバル力」を付ければ役満でしょうか。
これは企業が欲しい学生像だったり、学生が就活でアピールする時の言葉でもあります。
しかし、私も教育に携わる一員として、このような風潮を理解できません。
基礎の学力ができていない学生を教育すれば、課題を解決できるようになるのか?
話す内容を持たない人が卓越なコミュニケーション能力を発揮してプレゼンできるのか?
学生もかわいそうです。
基礎の教育が疎かのままで、「創造性を発揮して」「課題を解決し」「プレゼンしろ」と言われたら、デタラメを堂々と話す若者が量産されるのは必然です。
問題なのは若い人ではなく、そうした人を育成しているシステムです。
現在の「課題解決力重視」の風潮は、アメリカのMBAのような教育を、間違ったやり方で日本に輸入しているというように感じます。
私は30代でスタンフォード大学のMBAに留学する機会を得ました。
スタンフォード大学のMBAが目指しているのは「General Management」という能力。
営利、非営利のいずれの組織でも、集団を運営するにはマネジメント能力が必要です。
人間の集団を率いるスキルは分野にかかわらず一般性のある(つぶしのきく)スキルであることから、単なる経営力(Management)ではなく「General」という言葉が入っています。
日本の中学、高校、大学で言う「課題解決力、コミュ力」の教育とアメリカのMBA教育は似て非なるもの。
創造する事、課題を解決すること、プレゼンすること(情報を伝えること)は、基本的にアウトプットです。
つまり、自分が既に持っている知識や経験を基に、ソリューションを生み出すこと。
インプットが足りない人がどうすればアウトプットできるようになるのか、私には理解できません。
アメリカのMBAの入試で職務経験が求められるのは、既にインプットがある人だけしかアウトプットできるようにならない、ということではないでしょうか。
アメリカの大学院の入試では学力も非常に重視しています。
GMAT/GREといった試験、TOEFL(英語の試験)に加えて、大学での成績でも足切があります。
私の場合は、MBAの入試では学部と修士の成績を提出しました。
10年位前の成績を出させられたのは驚きましたが、過去の蓄積が必要ということなのでしょうね。
アメリカの大学院の入試ではエッセーや面接があることが有名ですが、面接に到達するには、、ペーパーテストや大学の成績など、インプット面で高いバー(足切り)を乗り越えなければならないのです。
インプットとアウトプットはバランスが大切。
かつての日本はインプットが重視されすぎていたのかもしれません。
知識がある人は多いけれど、知識を生かせてないという反省からか、いつしか日本の教育はアウトプット重視に変わってきました。
AO入試だけでなく、一般入試も「課題解決型」に変わるとも言われていますが、本当にそれで良いのでしょうか。
まずは基礎のインプットがあってこそ、アウトプットができる、課題を解決できるようになる。
中学・高校・大学の最初はインプットのための重要な時期だと思うのですが。
こうして日本の教育は「ゆとり教育」に続いて、実に不思議な実証実験をすることになるのかもしれません。
基礎が大事だと主張する私も大学で課題解決型の講義を始めました。
「エンジニアリングデザインがメーカーを救う ソフト・ハード融合の本質はマネタイズの革新」
しかし、こういった講義はインプットがあった後にあるべきです。大学では4年生を対象にしていますが、「世の中は経営とかマーケティングなどもあるよ」と簡単に触れる程度にとどめています。
講義では、将来、仕事をする時には課題解決力が大切であることを伝えつつ、それでも学生のうちは、学生の時しかできない基礎力をつけて欲しいと言っています。
インプットが足りない学生にアウトプットを求めるのは本末転倒だからです。
むしろエンジニアリングデザインは社会人を対象にした講義にすべきとさえも思っています。
ところで、このブログを書こうと思ったのは、「小4なりすまし」の件があったから。この件に関しては、UEIの清水亮さんの意見に同感です。
かつて天才プログラマーとも言われた人が、どうして転落してしまったのか。
とても残念に思いました。
本当は大学1、2年生といえば、インプットするべき時期です。「年の割には天才的」と言われても、インプットを怠っていたら成長は頭打ちでしょう。なんとももったいない。
世界には上には上があるのだから、中途半端なスキルを使って社会を変えようとするよりも、大学生ならば自分の力を蓄える方に行かなかったのはなぜだろうか、と考えさせられました。
もちろん、ジョブズやザッカーバーグのような本当の天才は別です。ごくごくまれに居る天才ならば、即、アウトプットでも良いでしょうが、大半の普通の人は違うでしょう。
大学生のボランティア活動やインターン重視というのもどうかと思っています。生活費を稼ぐためなら仕方ないですし、多様な経験のためには良いのですが、インプットを怠ってしまうともったいない。インプットできるのは学生の間だけ。インターンやボランティアが忙しいから勉強する時間が無い、という話も聞きますが、本末転倒していると感じます。
働く先が教育をしっかりしてくれれば良いのでしょうが、「ただで働いてくれるアルバイト待遇」では中途半端な職務経験ができるだけで、成長にはつながりません。
今の自分については、本当はアウトプットし続けなければいけない年齢・立場なのでしょうが、まだまだ、インプットが不足していると痛感しています。
ITの技術についても、「課題を解決する」には、一つの分野だけでは不十分。ハード、ソフトからサービスまで幅広く理解していることが不可欠。
つまり一つの領域の専門家ではだめなのです。
インプットのための時間を作るために、学会や人と合うことを年々控えるようになり、年末も忘年会に参加することも少なくなりました。
そうしてできた時間を使って、一人で本を読んだり勉強しなければ最先端の研究を続けられなくなると思っています。
これは分野にかかわらず一般的な傾向なのでしょうね。
「バフェット氏は仕事の80%の時間を『読んで考える』に使う」
こちらのブログを一部引用させて頂くと、
「バフェット氏ほどの人なら、プライベートジェットで飛んで誰かと会って話をするとか、世界中からさまざまな人を集めてミーティングをするとか、世界各地のテレビニュースを見るとか、どんな先進的な方法でも、どれほど高価な手段でも、情報収集の手段としてつかえるはずだ。しかし、彼が今でも、仕事の80%の時間を『読んで考える』ことに費やしているということは、とても示唆的だと思うのだ。」
世界有数の投資家(そして富豪)であるバフェット氏も、多くの時間をインプットとそれを基にした思考にあてているわけです。
ネットに情報があふれている時代でも、人はそんなに賢くなったとは思えません。
情報を取捨選択して使いこなすのはあくまでも人間です。
だからこそ、アウトプットの前にインプット。
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