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朝日新聞の慰安婦記事がもたらした影響:FT紙の分析

今日の横浜北部はあさから快晴です。気温も上がり、過ごしやすい週末ですな。

さて、ちょっと前なのですが、イギリスの日経新聞であるフィナンシャル・タイムズ(FT)紙の記者が、一連の慰安婦誤報問題について、NYタイムズとは違ってかなりバランスのとれた分析を書いておりましたのでその要約を。

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朝日新聞の性奴隷「慰安婦」報道は日本で激論を巻き起こす
by デメトリ・セバストプロ

●木村社長は先月、極めて異例となる社内会合を開催したのだが、その時の現場の雰囲気はかなり緊迫いしたものであったという。

●この場に居合わせた2人の目撃談によると、「木村社長、辞任してください!」と何人かの社員たちは叫んでいたというが、これは日本において公的な場で社員が社長に反対意見を示すという、きわめて珍しいシーンであった。

●朝日新聞はその中道左派的なスタンスから「日本のニューヨーク・タイムズ」として知られており、日本政府を痛烈に批判しながら翻弄するような存在として君臨してきた。

●ところが現在ではこの世界第2位の規模を誇る日刊紙の、第二次世界大戦の性奴隷についての報道で生じた危機に対する木村社長の対処について、社員たちは怒りを表している。

●135年の歴史を持つこの新聞社は、今年の8月以来、日本の兵士が戦時中に強制的に韓国の「慰安婦」たちを軍の徴用していたとする十数年前の一連の記事を訂正してから、大きな批判さらされている。

●また同じ頃に、福島の原発危機についても誤った報道(吉田調書)をしたことも認めている。

●朝日新聞は、その800万人の読者を狙う保守系の読売新聞と産経新聞から、批判の集中砲火を浴びている。さらにこの騒動は、旧日本軍が戦時中に女性を売春を強制したことを否定する集団たちにさらなる論拠を与えたために、地域外交にも影響を与えている。

●習近平は最近まで安倍首相に会うのを拒否していたが、この理由の一部は、安部首相の歴史観に懸念を持っていたからだ。韓国の朴槿恵大統領も、安部首相が慰安婦にさらに強調した謝罪を出すまでは公式会談を行なわないとしている。

●ところが安部首相は今年のはじめにそれとは正反対の方向に向かうことで議論を巻き起こした。彼は慰安婦の募集について「旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した」ことを日本政府が認めた画期的な1993年の「河野談話」を再検証するよう指示している。

●日本の専門家たちが指摘しているのは、軍が直接的的に関与したとする十分な証拠がないということであり、慰安婦たちは業者たちによって軍の慰安婦所に連れて来られたと結論づけている。

●何人かの主流派の歴史家たちは、旧日本軍がその業者を選択して売春宿を管理していたという意味でその責務を負うべきであると述べているが、右派の歴史家たちは旧軍には何も責任はないと述べている。

●また、「日本政府は韓国との緊張を緩和するためにこのような文言に同意した」と指摘する人もいる。別の保守派の人々は、慰安婦たちはただ単に職を求めていた人々であると述べており、このコメントは「長年強制されて強姦されてきた」とする多くの韓国人や中国人の多くを激怒させている。

●安部首相は結果的に河野談話を見直さないことにしたが、この見直し作業自体は、彼が周囲を固める人々と同様の「歴史修正主義者」であるという疑いをさらに深めることになった。

●朝日新聞の訂正以降、安部首相のコアな支持者で右派の著者である櫻井よしこ氏は「プロパガンダ新聞」は廃紙すべきだと宣言している。

●安部首相の友人でNHKのトップに任命された籾井勝人氏も、今年の始めに戦時中の慰安婦の使用を擁護する発言をしており、NHKは全般的に政府の見解に沿うように報道しなければならないと強調している。

●朝日がここまで日本の保守派を怒らせた理由の一つは、一連の記事の中心人物で旧軍の兵士であった吉田清治氏の証言が、慰安婦たちが「軍の性奴隷であった」とする国連の画期的な報告書の論拠として引用されていたからだ。

●安倍政権は朝日新聞の訂正を受けて、国連に対してこの報告書の書き換えを求めているが、国連側はそれ以外にも証拠が豊富にあるとしてこの要請を拒否している。

●インテリジェンス企業であるテネオ・インテリジェンスの日本専門家であるトビアス・ハリス氏は、日本政府の朝日新聞に対する批判は、河野談話の信頼性を損なおうとするあからさま動きであると述べている。

●「もし米政府がニューヨーク・タイムズ紙にたいして同じようなことをしたら政治的なスキャンダルとなるでしょうね・・・これは河野談話を支持すると言いながら河野談話を空洞化させているわけですから」とハリス氏は述べている。

●政府からの批判というゾッとする結末を懸念する人々もいるが、伝統的な朝日新聞の支持者たちは、木村社長が「オウンゴールをした」と言っている。

●ある人気コラムニスト(池上氏)は、訂正の発表と共に謝罪文を掲載しなかった朝日新聞を批判する記事を掲載しようとして拒否されている。ところが批判にさらされた朝日新聞は、後にこの記事を掲載している。

●朝日新聞のこの状況に詳しい人によれば、この掲載拒否の決断は社内のモラルを潰した「キラーパス」だったという。別の人によれば、圧力に負けて12月はじめに退社することになっている木村社長はすぐに辞任しなかったために「決定的な失敗を犯した」というのだ。

●また、朝日新聞は20万人が慰安婦として強制された書いた植村隆記者の記事によってもその評判を落としている。この数は実際は工場などで強制的に労働させられた日本人を含む「志願者」の女性である「挺身隊」を示したものであるが、彼はこれを「慰安婦」としてしまったからだ。

●慶応大学の細谷雄一教授によれば、「朝日新聞の最大の誤りの一つは、植村氏をかばい続けたこと」だという。

●これらの記事はたしかに朝日新聞の評判を落としたのだが、これがもたらしたさらに大きな懸念は、右派団体が植村氏が講師を務める大学に爆破予告をしたことである。

●日本政府のあるアドバイザーによれば、「朝日新聞はたしかに巨大な間違いを間違いを犯したが・・・・安倍政権がやっていることはやや危険なものになってきている」と述べており、首相はヘイトスピーチに対して厳しく対処すべきだとしている。

●慶応大学の日本政治の専門家である曽根泰教教授によれば、日本の新聞と右派からの朝日への度重なる批判が示しているのは、東アジアにおける大きな変化を反映したものであるという。

●彼によれば、メディアはより極端化しており、「ソニーはサムソンに抜かれた」という右派にとっては不愉快な現実に示されているような中国と韓国の台頭に直面して、保守派はその勢いをますます増加させているという。

●また、朝日新聞では現場記者たちが幹部たちにたいして木村社長と共に辞任するよう抗議している。この状況に詳しい人によれば、昔の記者たちは朝日で働いていることを人に自慢できたという。ところが現在の彼らはどこの記者なのかと問われると、声をひそめながら「すいません、朝日新聞なんです」と言うようになったという。
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客観的かつ冷静に見てますね。

これについてはメルマガのほうで少しコメントしてみます。

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