財務省の言うことを聞かなかった総理
財務省出身で税制に詳しい森信茂樹・中央大法科大学院教授(税法)は「増税するなら解散すべきだが、先送りは解散の大義にならない」と話す。「増税を先送りするなら、社会保障も先延ばしするということも具体的に示して国民の判断を仰ぐべきだ」
森信氏は、強硬な消費増税論者なので、せっかくうまく仕組んだ増税が吹っ飛ぶことをおそれているだけだ。そもそも、今回の消費増税の根拠になっている消費増税法は、民主党政権が選挙公約になったのに、財務省が政権運営に不慣れな民主党幹部を籠絡して、同時に野党の自民党も抱き込んで、国会で成立させたものだ。
財務省は、国民ではなく国民に選ばれた議員による間接民主主義の弱点を知悉している。国民すべてを騙すのは難しいが、少数の国会議員なら騙しやすいのだ。
そのときには、国会議員だけではなく、マスコミ、有識者、学者への「ご説明」を組織で行う。これらの人は単独で財務省の「ご説明」にあうとほとんど折伏される。筆者も大蔵官僚時代に、こうした「ご説明」要員であり、学者を担当していた。大蔵省幹部の国会議員やマスコミへの「ご説明」にも同行したことがある(かつて「ナベツネ」もあった)。
消費増税については、財務省の国会議員、マスコミへの「ご説明」が行き届いた状態であった。「ご説明」だけではない。国会議員は、増税後の予算のアメ、地方議員や地方の首長も増税後のアメ、経済界は増税後の減税、マスコミは増税後の軽減税率、、エコノミストは親金融機関への財務省の便宜供与、学者・有識者はそれぞれ増税後のステータスなどで、増税支持を既に明確にしていた。
増税をストップさせ、こうした利権にまみれた事態をひっくり返すには、もはや解散しかなかった。そうした中で、最後の「ちゃぶ台返し」をした安倍首相について、増税のアメを失った増税論者が批判しているのが、大義がないという言い方だ。
安倍首相は、18日の解散の記者会見で「代表なくして課税なし」という言葉を引用している。これは、米国独立戦争の時の言葉であり、税を国民で決めようという言葉だ。偶然にも、18日の会見の当日の夕刊フジで、筆者はこの言葉を引用している(翌日にネットで掲載されている)。
この言葉は財務官僚なら誰でも知っているが、本音は嫌いである。
税は大衆に任せるとダメになるので、エリートだけ決めればいいと内心は思っている。その意味で、民主党政権の時に、公約にのせずに消費増税をうまく仕組めたので、それがベストと思っている。
森信氏は「増税するなら解散すべき」というが、消費増税を国民の信を問うことなく成立させた民主党政権を批判したことがないのは、まったく整合性がない。安倍首相が、上げるのではなく下げるのにも国民の信を問うといったので、財務官僚はそれにショックを受けているだろう。
「代表なくして課税なし」というのは、財務省に意見を聞くのではなく、国民に意見を聞くという意味だ。財務省のいうことを聞かなかった総理は、戦後ではまずいないだろう。それほど歴史的には珍しい出来事だ。
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