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福島を忘れるな 首相、復興支援策に言及なく アベノミクスに冷たい視線

 衆院が解散した21日、県民は、「アベノミクス」の是非を問う衆院選に冷ややかな視線を向けた。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から3年8カ月余りが経過した今も、避難生活の長期化や汚染水問題など課題が山積している。「師走決戦」の先に復興はあるのか。県民の多くは古里再生への道筋を示す具体的な被災地支援策を求める。
 大熊町から避難した住民が暮らす会津若松市の仮設住宅。無職星野明さん(79)は、妻伴子さん(78)と衆院解散の様子を映すテレビを見詰め、2年前の安倍晋三首相(当時・自民党総裁)の言葉を思い出した。衆院選公示日に福島の地で「福島の復興なしに日本の未来はない」と第一声を放った。復興に向けたリーダーシップに期待したが、災害公営住宅の建設延期など復興が進んだ実感はない。
 夕方の解散会見で安倍首相は国民に「(景気が低迷していた)2年前を思い出してほしい」と訴え、アベノミクスの是非を問うため解散を宣言した。しかし、復興に向けた言葉はなかった。「安倍さんこそ2年前を思い出すべき。この時期に金の掛かる選挙をするのは疑問」。明さんは衆院選で復興策がさらに滞るのを不安視した。
 いわき市南台の仮設住宅で暮らす双葉町の無職田中イクさん(75)は「選挙をして一体、何が変わるのか。野党もドタバタしていて頼りない」と遅々として進まない復興に納得がいかない表情を見せた。
 原発事故発生後、県内の漁業関係者は本操業の再開を目指し、相双、いわき両地区で試験操業を続けている。
 相馬市では相馬双葉漁協松川浦支所で年明けからの小型船による試験操業の打ち合わせが行われていた。「心が折れそうになっても頑張っている本県の漁業者を忘れてほしくない」。漁業安達利郎さん(64)は被災地の現状を訴える。「原発の廃炉作業を安全に迅速に進めてもらわなければ、福島の漁業は厳しいままだ」と切実な思いを口にした。
 過疎化が進む中山間地の活性化や育児環境の充実を求める声は多い。南会津町で婦人会や青少年の健全育成の活動に携わる馬場二三子さん(72)は、Uターンで古里に戻る人は増えたが、それ以上に子どもの数が減っているのに危機感を募らせる。「地方で安心して子どもを産み、育てる環境づくりをしてほしい」と注文した。

■県民の評価さまざま
 安倍首相が訴えるアベノミクス継続の是非を問う衆院選。県民の評価はさまざまだ。
 「アベノミクスは名前だけが先行し、景気が良くなった実感は全くない」。福島市の大学職員の男性(38)は、景気回復が地方にまで及んでいないと分析した。
 一方で、白河市の無職平野健一郎さん(80)は2年前と比べて景気は上向いていると感じるという。「好景気の勢いに乗って、政治家は被災地の復興を後押しして」と要望した。

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衆院解散を伝えるテレビを見る星野さん(右)と妻伴子さん
衆院解散を伝えるテレビを見る星野さん(右)と妻伴子さん

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