ここから本文です

<長野北部地震>屋根持ち上げ80歳救出 白馬の住民団結

毎日新聞 11月23日(日)21時51分配信

 長野県北部を震源として22日夜に発生した地震は、23日の夜明けとともに、被害の実態が明らかになった。20人以上のけが人が出た白馬村では、全壊などの家屋被害が同村神城(かみしろ)の堀之内と三日市場の隣り合う両地区に集中。深さ5キロと浅い場所を震源とした内陸型地震が直上周辺に大きな被害をもたらしたとみられる。家を失わなかった人たちも停電により暖房の手段を失い、避難所へ向かったり、車の中やテントで、23日朝の最低気温氷点下1.1度という寒さから身を守った。

【長野・善光寺】地震で石の灯籠が多数倒壊

 「ドーン」。22日午後10時8分、地震発生時、堀之内地区の自宅で寝ていた無職、吉沢諄俊(あつとし)さん(80)は、下から突き上げるような揺れで目が覚めた。その直後に屋根が崩落。両足から腹部を挟まれ、身動きが取れなくなった。辺りは停電で真っ暗。「助けてくれ」と叫び続けるしかなかった。

 そのころ、同地区住民の安否確認をしていた会社員、三浦洋二さん(61)は、見回り先の住民から吉沢さん夫婦が倒壊した自宅に取り残されていることを聞かされた。急いで向かうと、すでに住民たちが救出活動を始めていたが、数人が持つ懐中電灯だけが頼りだった。

 吉沢さんの妻は屋根を少し持ち上げて自力ではい出したが、耳と目が不自由な吉沢さんはまだ動けずにいた。吉沢さんの親類が心配そうに見守る中、住民男性3、4人で屋根を持ち上げようとしたがびくともせず、近くにある建設会社のフォークリフトを使って屋根を持ち上げ、なんとか救出できた。

 救出後、村内の親類宅で一晩を明かしたという吉沢さんは毎日新聞の取材に、「近所の方々に助けてもらって本当に感謝の言葉しかありません」と、疲れ切った様子で話した。長野県安曇野市から駆けつけた妹の山田輝美さん(78)も「近所の皆さんに助けてもらい、とてもありがたかった」と頭を下げた。

 救出活動に加わった三浦さんは「助け出された直後、『右肩が少し痛い』と言っていたが、特に大きなけがはなくて良かった」と胸をなで下ろした。【中津川甫】

 ◇「もう住めないかも」

 地震から一夜明けた堀之内地区では、公民館のある中心部へ近づくにつれ、道路はひび割れ、あちらこちらで波打つようになり、傾くように潰れた家屋が現れた。時おり余震に見舞われる中、住民らが自宅の様子を見に戻り、被害確認に追われる行政職員の姿がみられた。

 1人で雪かきができないため1週間前から同県松本市の長女の元に身を寄せていた柏原明美さん(82)は23日午前8時過ぎ、自宅に戻った。居てもたってもいられなかったという。

 全壊こそ免れていたが、室内は障子や棚などが倒れてぐちゃぐちゃに。「あまりにもひどく、どこから手を付ければいいのか分からない。もうこの家では住めないかも」。外れて道路側に倒れた雨戸を動かすのがやっとだった。窓が外れてむき出しになった家では、男性が「もうすぐ雪が降るから」とブルーシートをかぶせていた。

 消防署員は災害救助犬を連れ、倒壊した家屋の下敷きになった人がいないか入念に見回り、ガス会社職員はプロパンガスのボンベを高圧ホースから外す撤去作業をしていた。

 昼ごろには村から要請を受けた県職員が現れ、被災した家屋が今後の余震で倒れないか判断するため、危険▽要注意▽調査済み−−の3段階に分けた紙を貼り付ける作業をしていた。【野口麗子、堀祐馬、金寿英】

最終更新:11月23日(日)23時38分

毎日新聞

 

PR