さらに、これに加えて中国は、明らかに米国の軍事力の衰えを見透かしているとの声もある。語るのは、前出の防衛省関係者だ。
「米国は近年慢性的な金欠病に陥り、何度も国債の債務不履行危機に直面している。そのため、昨年から10年間で4900億ドル(日本円で約50兆円)もの軍事費削減が行われているのです。この影響を最も受けているのが空母力。米空母は1隻に5000人が乗船し、1日動かすだけで数百万円の経費が掛かるが、そのうち張子の虎になる可能性が指摘されている。ゆえに中国政府は、米国が世界の警察の地位から脱落する日も近いとタカをくくっており、日本と開戦した場合には後方支援もできないだろうと見ているのです」
一方、中国側は毎年軍事費を二桁ずつ伸ばしており、'13年の国防費は公表されているだけで11兆円。「実際は、この2倍から3倍の軍事費が費やされている」(軍事ジャーナリスト)ともっぱらで、着々と海洋覇権を狙いだしているのだ。
「また、それと同時に中国政府は来年3月に日本の自衛隊が護衛艦『いずも』を就航することに目を光らせている。この船は全長248メートル、全幅38メートルの大型船。オスプレイをはじめとする14機のヘリが搭載可能な空母機能を備えており、就航すれば尖閣海域の軍事勢力図を塗りかえてしまう可能性がある。そのため、この船を脅威と見た中国軍は、就航前に尖閣を実効支配しようと動き出したとみられているのです」(前出・防衛省関係者)
要は、米軍の没落ぶりと日本の最新鋭護衛艦就航の間隙を縫って陽動作戦を仕掛けたようだが、恐ろしいのはこの後に展開するとみられている尖閣実効支配の青写真なのだ。
前出の自衛隊幹部が言う。
「自衛隊の上層部や海上保安庁では、12月13日の南京大虐殺の国家追悼日を最も警戒している。というのも、来年は戦後70年にあたり、太平洋戦争、第二次世界大戦の前段となったのが、日本軍が起こしたとされる南京大虐殺事件だからです。中国軍が反日攻勢の一環として、この前後に工作員や民兵らを尖閣に上陸させ、宣戦布告する可能性は高いといえるのです」
また、前出の軍事ジャーナリストがこう指摘する。
「中国共産党は『戦後70年を迎える来年、日本をさらに糾弾する方針を固めている』といわれており、師走から年明けにかけてこの動きが活発化することは否めないのです。ちなみに、小笠原諸島とグアム、サイパン、パプアニューギニアを結ぶ線は、中国政府が『第二列島線』と呼ぶ対米国向けの軍事戦略上の最重要ライン。…