市場の朝市へ出かけた。
一年に一度だけ一般開放される市場の朝市は、足を踏み入れるだけでなんだかワクワクする。
風船を配っているのを見た娘が「ほしい」と言ったので列にならんだ。ピンクの風船を選んだ娘は、「少し待たせちゃったから」と白とピンクの2つの風船をもらった。ピンクと白の風船が絡み合いながらゆらゆらと娘の頭上で揺れていた。
空にはすでに誰かの手から離れてしまったであろう青い風船が高く高くのぼっていった。
私は果物をたくさん買った。スーパーで果物が欲しいなと眺めても、値段が高く手を引っ込めてしまうことがあるのだが、今日は躊躇することなく買うことが出来た。
その後、車を走らせていつもは行かない大きな公園へ行った。
到着寸前で道を間違えたため、すぐそばにあった道の駅へ寄り道をした。
わたあめが50円で売っており、息子がおじさんの指導を受け、割り箸をくるくると回して大きなわたあめを作った。うっすら緑色をしたわたあめは口に入れるとほんのりとメロンの味がした。
公園で子ども達が遊んでいるのを眺めながらベンチに腰掛けた。休日の公園は子ども達のはしゃぐ声と笑顔で溢れていた。縄跳びを懸命にしているお父さんもいてウフフと笑ってしまった。
「お母さん、私、この子と一緒に遊ぶの」と娘が知らない女の子を指差しながら言った。
女の子は「お父さん、私、この子と遊ぶ」と娘を指差して言った。
女の子の視線は私が座っているベンチの端にいた男性に向けられていたため、ああ、この人が女の子のお父さんだったのか思い、お互いぺこりと頭を下げた。
単菅バリケードは種類が豊富で面白い。
家に着いてから、ケーキが焼きたくなったのでボウルと泡立て器を取り出し、作り始めた。
半額で購入したドライフルーツ、30%引きだったアーモンドダイス、市場の朝市で購入したバナナ、それから私の父が作ったブルーベリージャムの残りを更に煮詰めてラム酒を少し振ってから混ぜ合わせた。
オーブンに入れてしばらくすると、バターの香ばしい香りと甘い香りが鼻腔をくすぐりとても心地良かった。私はパウンドケーキの焼ける香りを嗅ぎたいからケーキを作るのかも知れないと思った。
その香りに包まれながら本を読んだ。
幸せな時間だった。
できあがり。
息子が美味しいと言って食べてくれたが、娘はパウンドケーキが好きではないので少しさびしい。
私はママ友をあまり必要としていないのだけれど、パウンドケーキを焼いた時に一緒に食べてくれる友達が欲しいと思った。パウンドケーキを食べながら紅茶を飲んで「ああ、これはパウンドケーキだね」「そうだね」ぐらいの適当な会話をする相手。
風がふわっと舞い込んで誰かを連れて来てはくれないだろうか?
そんなことを思いながらパウンドケーキを口に入れた。
フルーツの甘酸っぱさが口中に広がり「おいしい」と思った。