消費税率8%で痛手受ける日本経済、欧州が20%でも耐える訳
11月19日(ブルームバーグ):日本の安倍晋三首相は「急いては事をし損じる」ことを理解しつつある。
消費税率を5%から1年半で10%に倍加する当初の試みは、2008年以降で4回目の2四半期連続マイナス成長 を招き、来年10月に予定していた2回目の消費増税を延期する必要性をもたらした。総選挙が差し迫る中で、消費税率は17年まで現行の8%に据え置かれることになりそうだ。
ここでの教訓は8%への引き上げが過大かつ性急であったことが判明したことだ。消費税率の引き上げ幅3ポイントは当初の5%の6割に相当する。対照的に、英国が11年に実施した2.5ポイントの引き上げは、従来の税率の14%相当の上げ幅にすぎず、リセッション(景気後退)も招かなかった。
調査会社キャピタル・エコノミクスのチーフ国際エコノミスト、ジュリアン・ジェソップ氏は「以前から消費税率が低い日本の方が割合でみると、かなり大きな増税だ」と指摘。「意味のある金額になるだけに、心理的にはかなりの一大事だ」と付け加えた。
実際、予定される日本の消費増税は、経済協力開発機構(OECD)加盟国では1960年代後半に初めて消費税が導入され始めて以来、ほとんど例を見ない規模だ。最近の日本以外の諸国の消費増税は相対的に比較すると、控えめだ。スペインは2010年以降、税率を16%から21%に引き上げたが、3年にわたり2段階で実施した。イタリアも2段階の措置を経て11年の20%を22%に引き上げた。
日本の消費増税に匹敵するのは英国が1979年に付加価値税(VAT)を一気に8%から15%に引き上げた事例だ。これは放漫財政を抑制するよりもむしろインフレを封じ込めることを狙ったものだが、それでも英経済のリセッション入りにつながった。
日本が諸外国に追随して消費税を導入したのは89年になってからで、税率は3%でスタートした。97年までに5%に引き上げられたが、その後不況に陥り、当時の橋本龍太郎首相は退陣に追い込まれた。この教訓を安倍首相も今は理解しているだろう。
原題:Why Japan’s 8% Tax Hammered Economy While Europe Withstands 20%(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ロンドン Simon Kennedy skennedy4@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Christopher Anstey canstey@bloomberg.net Scott Lanman
更新日時: 2014/11/19 12:28 JST