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隠れ天下り「本省から押しつけられた」 独法職員ら証言

2009年12月11日3時0分

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 独立行政法人が中央官庁の天下りOBを高給の嘱託職員にしていた問題をめぐり、複数の独法職員らが朝日新聞の取材に対し、人件費削減などの規制を免れた「隠れ天下り」の実態について証言し、「本省から押しつけられたポストだ」などと明かした。専門家は「嘱託以外にも天下りの抜け道は様々ある」と指摘している。

 「ついにばれたか。隠れ天下りが世間に知られないまま、今までよくもった」。ある独法に勤める職員はこう漏らした。

 総務省が8日に公表した、年収1千万円以上を得ている嘱託職員の調査結果によると、厚生労働省関連が「高齢・障害者雇用支援機構」など4独法で計8人と最も多かった。

 厚労省所管の独法の一つに勤めていた元職員は、嘱託扱いの天下りOBについて、「同じ職場にいながら名前も分からなかった。専門的な仕事をするために雇われているはずなのに、実際は何かの分野に通じた人たちでもなく、高い給与が見合っているのか疑問だった」と話す。また、別法人の元幹部は「基本的に仕事が分からないので、たまに業務に口出ししても見当違いのことを言う。昔はもっとひどく、出勤しない人もいた」。独法の現役職員の一人は「本省が押しつけてきたポストだった。まともな人もいるが、多くの職員が『あの人たちは何をしているのだろう』と不思議がっていたのが実情で、明らかに不要ポストだった」と批判した。

 これに対し、嘱託として独法に勤める官庁OBは取材に、「好きで独法に行ったわけではない。公務員はある年齢になると外に出ろと言われる。満足かと言われればそうではない」と重い口を開いた。1千万円を超える年収については、「高いか安いかは個々の判断だ」。

 天下り規制の抜け道は、「隠れ天下り」問題にとどまらない。元厚労省官僚で、天下り問題に詳しい兵庫県立大学大学院の中野雅至准教授(行政学)は「外部が認識しづらい天下りには、様々なやり方がある」と言う。中野氏によると、問題となった嘱託だけではなく、将来の天下りを前提とした片道切符の「出向」や非常勤の雇用も増えている。元中央官僚が民間会社を設立して役員に就いた後、出身官庁からの委託事業を受注し、過大な利益を得るケースもあるという。

 ただ、中野氏は「天下りをたたくだけではいたちごっこになる。65歳定年制をどうするかなど、公務員の人事制度を真剣に考えないといけない」と述べた。

 キャリア官僚は同期から事務次官が1人しか出ず、出世が遅れると定年前に退職し、再就職するのが普通で、受け皿の問題がつきまとう。民主党は早期退職慣行を改めようとする一方で、国家公務員の人件費2割減も目指している。ある同党議員は「公務員の士気を下げてもいけないし、相当難しい調整が必要になる」と語った。

     ◇

 次々と明らかになる「隠れ天下り」。民主党政権も早々に調査結果を公表し、この問題に力を入れるが、そこには日本郵政の社長人事などで批判を浴びた失地回復の思惑もあるようだ。

 「天下りに対する取り組みは後退したんですか」。民主党の鷲尾英一郎衆院議員(新潟2区)には地元からこんな声が寄せられるという。

 きっかけは、10月の日本郵政の新社長人事。元大蔵事務次官の起用が明らかになると支持者から疑問の声があがった。鷲尾氏は「支持者は、景気や生活不安に次いで天下りに強い関心がある」と話す。

 民主党は8月の衆院選でのマニフェストで、「天下りを根絶」などと厳しい姿勢を示してきた。自民党からも「マニフェスト違反だ」との批判を浴びる逆風の中で、11月の行政刷新会議の事業仕分けでは、独法の天下りOBが受け取った多額の報酬などの問題に切り込んだ。「隠れ天下り」問題でも、原口一博総務相は8日の発表で「国民の平均年収を基準に再調査を進める必要がある」と強い姿勢を示した。民主党関係者は「天下り見直しはできるところからやっていくしかない。自民党政権よりは二、三歩前進している」と話した。(座小田英史、野村雅俊、釆沢嘉高)

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