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 日本臓器移植ネットワーク(移植ネット)は23日、順天堂大付属順天堂医院(東京都文京区)に入院中の6歳未満の女児が臓器移植法に基づいて脳死と判定され、臓器提供の手続きに入ったと発表した。脳死と判定された6歳未満の子どもからの臓器提供は、2012年6月の富山大病院の男児以来2人目。

 移植ネットによると、女児が脳死と判定されたのは23日正午。心臓は大阪大病院、肺は京都大病院でそれぞれ10歳未満男児に、肝臓は京大病院で10代女性に、腎臓は都内の2病院で成人男女に移植される予定。摘出手術は24日に行われる。膵臓(すいぞう)と小腸の移植は医学的理由で断念された。

 女児は順天堂医院に病気で入院していたが「低酸素脳症」と診断された。脳死とみられる状態になり、21日午後2時42分、病院が移植ネットに連絡した。移植ネットはコーディネーターを派遣。家族は同日午後3時19分に脳死判定と臓器摘出の承諾書を移植ネットに出した。女児本人の意思表示はなく、治療を受けるなかで家族から「臓器提供ができるのか」と問い合わせがあり、事前に一般的な説明を3回計4時間受けていた。提供は父母ら親族6人の総意という。

 6歳未満だったため、2回の法的脳死判定は、通常の6時間でなく24時間以上あけて実施された。1回目は21日午後3時26分~同6時で、2回目は23日午前10時~正午だった。判定は院内の医師3人が行い、外部から専門医の派遣は受けなかった。

 15歳未満からの脳死臓器提供を可能にした10年7月本格施行の改正臓器移植法では、虐待を受けた疑いのある子どもからの臓器提供は認めていない。今回、病院は児童相談所へ確認した上、院内の虐待防止委員会でも虐待の疑いは無いと判断したという。

 両親は移植ネットを通じて「とても心の優しい子でした。臓器提供という形で病気に苦しむお子さんを助けることに、きっと賛同してくれると信じています」とするコメントを出した。

 15歳未満からの脳死臓器提供は今回が6人目。1997年の臓器移植法施行後の脳死臓器提供としては296人目。

■両親のコメント全文

 臓器提供する女児の両親は23日、日本臓器移植ネットワークを通じて、コメントを発表した。全文は次の通り。

 私どもはこれまで娘の回復を期待し見守って参りましたが、つらく長い時間を経て、残念ながら脳死状態であり、回復の見込みがもはやないことを受け入れるに至りました。向かう先は死、という状況の中、臓器提供という道を選択した理由は以下の通りです。

 娘は進んでお手伝いをしたり、困っている子がいれば寄り添って声をかけてあげるような、とても心の優しい子でした。臓器提供という形で病気に苦しむお子さんを助けることに、娘はきっと賛同してくれると信じています。こうして娘が短い人生の最期に他のお子さんの命を救うことになれば、残された私どもにとっても大きな慰めとなります。

 そして、もし我が子が臓器移植でしか助からない疾患を持って生まれてきていたら、私どもも臓器提供を必死に待ち望んだことでしょう。しかし臓器提供をする人があらわれなければ、それはかないません。人はいつどちらの立場に立つか分からない。だからこそ、娘は今、臓器提供が可能な立場にいるのであれば提供しよう、と考えました。

 これまで全力で治療して下さった医師の皆様、愛情をもって娘を日夜お世話して下さった看護師の皆様、この困難な時期に私ども家族を支えて下さった多くの方々に、深く感謝申し上げます。そして、娘の臓器を受け取って下さる方々の回復を心よりお祈りいたします。