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福島第一原発の汚染水対策、「氷の壁」を断念。これが意味するもの。

タービン建屋から海側地下道(トレンチ)へ流入する汚染水対策として実施されていた「氷の壁」について、東京電力は断念する方針を明らかにしました。これは、同じ技術を使う山側の凍土壁にも影響を及ぼします。

凍土方式については、昨年から実証試験が行われていました。私は実際に福島第1原発を視察し、試験の様子を見て、内容が全く不十分だと考えていました(そのときの様子はコチラ)。

様々な技術者と話をしても、誰もが有効性に「?」を付けます。

そこで3月の予算委員会で、安倍総理に対して、凍土壁以外にもキャナル(堀)方式を並行して検討していただきたいと提案しました(その内容はコチラ)。

当時の茂木経済産業大臣に対しても何度も提言しました。委員会のみならず、大臣室を訪問して、静かな環境の中でもじっくりとお話もしました。

しかし、私の要求は通りませんでした。

「廃炉・汚染水対策については様々な方法の中から効率のいいものを採用する」という安倍総理の答弁。

昨年9月に策定された基本方針では、「技術的難易度が高く、国が前面にたって取り組む必要があるものについて」国がお金を出していくことになっていて(東電でもできることに国が出資することは、事故の責任が東電にあるという政府の言い分と矛盾するので、なるべく新技術でやろうという考え)、これを受けて原子力損害賠償支援機構法が改正されました。そのため、土を凍らすような未知の方式では無いとまずいのです。東電を赤字にさせないと言う配慮が垣間見えます。

東電が赤字になれば、4兆円もの民間金融機関からの借り入れ(3月末時点)の返済を迫られることとなり、それによって私が推奨している「東電法的整理論」が現実味を帯びてくる事も恐れているのでしょう。

予算委員会で要請をしてから9か月。結局「氷の壁」は断念され、政府・東電の計画は絵に描いた餅だったことが明らかになりました。

廃炉の「序の口」と言える汚染水対策で、これだけ失敗が続いている事に、本当に先が思いやられます。(オリンピック招致の為の「アンダーコントロール」も嘘だったと言われてしまいます)

東電に全額資金負担させることになって、同社の赤字幅を広げようが(今は取り繕った黒字なので、実際は赤字です)、一日も早く確実なキャナル方式に変えるべきです。

そもそも、今回の「断念」が発表されたのは解散で国会が閉まった11月21日。

その日であれば、大きなニュースにならないし、国会での追及も避けられるとの思惑があったのは間違いありません。

国民の目を欺こうという、このような姑息なやり方が、私には許せないのです。

原発推進か否かは選挙の最大の争点の一つです。

皆さん、それを忘れないでください。

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